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死活に強くなるだけではない。詰碁の効果とは?

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囲碁の勉強と一口に言っても色々と種類があります。

詰碁、定石、布石、手筋、ヨセ、それに実戦からの検討・・などなど。

もちろん、人にもよるかもしれませんが一番楽しいのは実戦で、それ以外の勉強にはかなり好き嫌いと得意不得意があります。

中でも、詰碁はヨセと並んで嫌いな人が多いイメージがありますよね?

僕の場合、詰碁はかなり好きな方ですが、同時に苦手でもあったりします。

今回はそんな詰碁について本気で考えてみました。

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詰碁とは?

本記事を読んでいる人には説明不要でしょうが、知らない人もいるかもしれないのでおさらいしておきましょう。

詰碁とは、囲碁の部分的な死活(石の生き死にのこと)を問う問題でいくつか種類が存在します。

  • 相手の石を殺す問題
  • 自分の石を生かす問題

大きくはこのように分類されますが、最近は前者の方が多い気がしますね。

相手の石を殺すか自分の石を生かすための、初手を探すパズルゲームが詰碁となります。数手先まで考えさせる問題もあり、その手順が多岐にわたるケースもありますが、初手の正解は1つだけというのがルールになっています。

というわけで、初手が複数存在する問題は失題扱い・・なのですが、それにも例外があります。

実戦によく現れる形を問うた詰碁の問題もあり、「実戦詰碁」とか「基本死活」と呼ばれていますが、この場合は初手の正解が複数存在する場合もあります。

実戦で詰碁のような唯一無二の正解がある状況は珍しく、より実戦的な死活を問う問題になっているのですね。

囲碁の棋力と詰碁棋力

詰碁の問題を解いたことがある人ならわかると思いますが、詰碁の問題には「3分で解けたら初段」のような棋力の目安が記されていることが多いです。

しかし、この目安はどうも囲碁そのものの棋力とは合っていないような気がしています。(よっぽど高レベルの人だと合ってくるのかもしれませんが)

実際、この感覚は多くの人が持っているようで、囲碁の棋力とは別に詰碁棋力のような言葉をしばしば耳にします。

僕の場合、囲碁の棋力はアマチュア低段者程度なのですが、詰碁棋力は正直それよりもかなり低い水準にあるという実感です。(たぶん級位者程度)

・・ですが!

詰碁棋力は低いですが、詰碁の勉強は間違いなく実戦に活かされていると思います。

詰碁はなかなか解けないのに実戦には好影響が出ているとはこれ如何に?

その答えは、詰碁を勉強することによって、どのような効果があるのかを考えてみたらわかります。

詰碁の表向きの効果

というわけで、詰碁を勉強することによる一番わかりやすい効果は何でしょうか?

それは、もちろん「死活が強くなる」ということでしょう。

  • 殺せる状態にある相手の石を殺せるようになること。
  • 弱い自分の石を適切なタイミングで守れるようになること。

詰碁を勉強しようとしている人の多くは、このような効果を期待して勉強しているのではないでしょうか?

しかし、ハッキリ言ってこれが完璧にできたら誰も苦労しませんし、ちょっと勉強したくらいで死活に強くなったと実感できる人は稀だと思います。(もちろん、少しずつは強くなっているのでしょうけど)

というか、そもそも実戦において勝敗に関わるほどの大石の取り合いはそうそう発生しません。僕程度のレベルだと度々発生しますが、それはどちらかに明確にミスがあったり、そもそも棋力差が大きかった時に発生しているのであって、詰碁棋力の高低が影響しているわけではないと思っています。

それでは、死活に強くなる以外に詰碁にはどのような効果があるのでしょうか?

詰碁の本当の効果

詰碁は、相手の石を殺すために勉強するものではないと思っています。

そもそも相手が強くなるほど、詰碁のように後1手で殺せるような状況にはそもそもならなくなってきます。

それでは詰碁を勉強する効果とは何か?

それは「打つ手の選択肢が広がる」ことだと僕は思います。

相手や自分の石が後何手で死ぬのかが正確にわかったらそれに越したことはありませんが、詰碁を勉強していたら正確に読めてなくても「何となく大丈夫そう」「何となく殺せそう」ということが感覚的にわかるようになってくるものです。

例えば、この「何となく大丈夫そう」の精度が高かったら、自分の弱い石が攻められている時に「まだ大丈夫」と手抜きする判断が選択肢として追加されたりするわけですね。

石の効率を競う囲碁というゲームにおいて、1手だけでも手抜きできることの効果はとても高いですよね?

このように、詰碁は1か0かという100点を求められる問題ですが、少なくともアマチュア低段者レベルの実戦では80点くらいの感覚でも十分に役立っているのだと思います。

そもそも、石を捨てるような判断すら選択肢としてあり得る囲碁の実戦と、取るか取られるかだけの詰碁とは全く性質が異なるものですしね。

その他にも、「相手の石の急所が見えるようになってくる」という効果もあります。

急所に石が向かったからといって必ずしも殺せるわけではありませんが、実戦においてこれは戦いを優位に進める結果に繋がります。

死活が完璧でなくても強くなれることは、それこそ囲碁AIの実績が証明しているところでもありますしね。

詰碁のすすめ

詰碁が苦手、嫌いな人は恐らく、絶対に正解したい。間違えるのは嫌だという、完璧主義者的なところがあるのかもしれませんね。

僕は正直「80点でいいや~」くらいの感覚で詰碁を解いているので、実は間違えてもあまり気にしていません。

何となく正解っぽい手を探して、間違ってても答えを見ては「なるほど~」と感心しているだけです。

だから強くならないという説もありますけど、少なくとも僕はこのやり方で楽しんで詰碁を解くことができ、棋力の向上に多少なりとも繋がっていると実感しています。

当然、詰碁を嫌がってやらない人よりは効果が出ているのは間違いないと思います。

詰碁嫌いな人も、「間違ってもいいや~」というもっと気軽な感じで詰碁をやってみてはいかがでしょうか?

詰碁の本(おすすめ)

古典詰碁の世界

難問揃いの古典詰碁ですが、詰碁というものそのものに興味を持つために古典詰碁に触れてみるのは「あり」だと思います。

何となく、古典詰碁を勉強しているというだけで何だか格好良いですもんね。(笑)

それに、そもそも古典詰碁に触れることのできる本って現在は少なくなってきていますし、そういう意味でも貴重な書籍です。古典詰碁の詰碁集とか、過去には結構出版されているようですが、現在は大抵古書店にしか売っていません。

また、前述したとおり古典詰碁には難しいイメージが付き物ですが、本書はそのハードルを下げてくれています。

詰碁の解き方の基本から始まり、特に難易度の高い問題は、その問題を解くための練習問題から始まります。

難しい問題も、比較的簡単(といっても難しい!)な問題のスタート地点を目指すことで解けることもあります。

元がとても難しいのでなかなか簡単にはいきませんが、そうやって練習問題をやっていることで難しい問題が解けることもあるので、そこまで詰碁棋力が高くなくても達成感を得られるようになっているのではないでしょうか?

古典詰碁の魅力

『古典詰碁の世界』と同時発売の本書。

詰碁の中でも特に難しいということで有名な「発陽論」にもお手軽に触れることができます。

・・といっても、「発陽論」に限らず難易度の高さは相変わらずですが、練習問題から始まる構成は『古典詰碁の世界』と同じです。

たまには難問もいきなり解けることがあったりして、達成感を得ることができます。

ちなみに、僕は古典詰碁集については橋本宇太郎先生のものをコレクションとして持っていますが、ハードルが高く感じて中身にはあまり触れていません。

僕程度には「うわっ、無理~」って思うような問題ばかりなので・・

そういう意味でも『古典詰碁の世界』『古典詰碁の魅力』は、興味はあっても気圧される雰囲気のあった古典詰碁に気軽に触れられる良書だったと思います。

基本死活事典

問題集というよりも、基本的な実戦形を網羅的に記した辞書のような位置づけの書籍です。名前からして「事典」ですからね。

これを完璧にできたら、相当な棋力向上が見込めるのだと思いますが、なかなかボリューミーで本書を勉強するような時間を僕は取れていません。

とはいえ、手元に一冊置いておいて実戦でよくでる形に、それこそ実戦で悩むようなことがあった時に、後から復習がてら該当する部分だけでも確認するような使い方ができると思います。

最初に記したように、辞書のような使い方をしているわけですね。

やさしい囲碁レーニング 実戦!詰碁の基本

内容的には基本死活事典と同じく実戦によく出る形の基本詰碁が掲載されていますが、こちらは問題集形式の書籍となります。

本書に限らず『やさしい囲碁レーニング』シリーズは、とても簡単な問題から徐々にステップアップしていくような構成になっていて、最初の方はどんどん問題を解き進めることができて大きな達成感を得ることができます。

かなり簡単な問題も掲載されているので初心者にもオススメですし、実戦によく出てくる形なので即効性も期待できます。

ある程度以上の棋力の人にとっても、簡単な問題を瞬間で答えを出すようにトレーニングすることは難問を時間をかけて解いていくのとは別種の、もっと実戦的な能力の向上に役立ちますし、それにかなり解き応えのある問題も掲載されています。

今までたくさんの詰碁の書籍を読んだことがありますが、恐らく一番実戦で役立つと思ったのが本書でした。