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はしっこアンサンブル。げんしけんの作者が描く合唱部の第1巻の感想

 

げんしけん」で有名な木尾士目先生の新作。

工業高校×合唱という珍しいテーマで「げんしけん」とはまた違った青春を描く物語となっています。

タイトルは「はしっこアンサンブル」。

げんしけん」の作中作の「くじびきアンバランス」と語感が似てますね。

げんしけん」といえば読む人を選ぶオタク漫画のイメージがありますが、「はしっこアンサンブル」はどちらかと言えば万人受けする少年漫画的な要素のある作品になります。

低い声にコンプレックスのある主人公。藤吉晃は1人で合唱部を作ろうと頑張る木村仁に引っ張られ、徐々に合唱に惹かれていく。

まさに少年漫画的展開ですね。

木尾士目先生の「げんしけん」や「Spotted Flower」のイメージとは違っていて、こういう作品も描かれるのだと意外に思いました。

しかし、キャラクターには木尾士目先生の描くキャラクターっぽさがしっかりあって、既存作品のファンでも楽しめる内容になっているのではないかと思います。

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本作の概要

低い声にコンプレックスを持ち、大きな声を出すことを極端に嫌う藤吉晃の声に才能を感じた木村仁が、藤吉晃を合唱部創設仲間に引き込もうとします。

工業高校に入学して喋らなくていい仕事につけるかもという思いを持つくらいコンプレックスが極まっている藤吉晃を強引に引き込んでいこうとする様は少年漫画的な熱さがあります。

声が出る仕組みや出し方など、合唱の専門的な部分も丁寧に描かれているのもポイントが高いです。

本作の見所

主人公 藤吉晃

1巻ということもあるのでまずは登場人物の魅力をお伝えしたい。

まずは主人公の藤吉晃です。

何となく「げんしけん二代目」の主人公。波戸君を彷彿とさせる、なよっとした中世的な雰囲気の少年ですが、コンプレックスを抱くほどのダンディな低い声の持ち主です。

合唱部を作ろうと毎日放課後目立つ場所で歌っている木村仁に周囲が引いている中、自分とは正反対の声と性格の木村仁のことを凄いと思い興味を持ちます。

「それは現象として事実だ!!」

仁と出会い、そして晃の低い声について力説される。

その説明の半分も理解できなかった晃だが、仁の声は一言一句完璧に晃に届いていた。

仁に流されるまま合唱部作りに協力することになった晃ですが、極めて合理的に練習場所を選ばない仁と、人通りの多い場所での練習を恥ずかしがる晃の性格の違いが顕著ですね。

しかし、これだけ正反対なのに相性が悪い感じがしないのは仁の性格によるものなのだろうと感じました。

ちなみに、咄嗟の事態に晃がシンガーズフォルマントという発声をするシーンがあるのですが、何だか凄いことをやったという風に描かれているものの、聞いたことのない言葉だったので意味を調べてみました。

何か良い声のことらしいけどよくわかりませんでした。(笑)

とはいえ、主人公らしく才能を発揮してくれた晃でした。

少年漫画にありがちな鉄板といえば鉄板ですが、こんな風にコンプレックスが才能に変わる瞬間って熱いものがありますよね。

ただ、主人公のわりに存在感が薄く、今のところ木村仁に食われてしまっている感が否めません。

今後主人公らしさをどう発揮していってくれるのかに期待ですね。

キーパーソン 木村仁

いわゆるコンプレックス系主人公が出てくる作品によくいる主人公を引っ張っていく立ち位置のキャラクターですね。

とても合理的で強引な性格が主人公の晃とは真逆です。

みんなから距離を取られている不良が付けているイヤホンを「何を聞いているの?」と勝手に取る。

そんなの不良じゃなくても怒るし、びっくりしますよね。(笑)

「歌う仲間を作りたい」

「できるだけ多く」

この2つが行動の大原則だという仁ですが、やはり1本芯のある人の行動ってハリがあるように見えますよね。

仁はだいぶ極端な部類ではありますが。

ちなみに、いかにも文科系オタクといった雰囲気の仁ですが、合唱のために体は鍛えられていて、体力自慢のラグビー部に筋力勝負で勝てるくらいです。

さて、今巻では一貫して高いテンションの強引なキャラクターであり、一番前に出ていて印象に残るキャラクターでもありましたが・・

主人公の晃の内面と違って、仁の内面は今のところあまり見えていません。

今後どのような顔を見せてくれるのかが楽しみですね。

その他の登場人物

今巻では顔見せ程度の登場でしたが、不良の折原。女生徒の倉田。

この辺りはメインキャラクターとして今後絡んできそうですね。

1巻の最後で仁が、折原に合唱部に入るように声を掛けているので、2巻では折原のエピソードが中心になるのかと予想しています。

そんなわけで折原はほぼ間違いなくメインキャラクターになっていくのかと思いますが、女生徒の倉田はまだ未知数ですね。

ちょくちょく幕間に登場していて、数少ない女子生徒の中では一番出番が多く、キャラクターも立っているので、今後メインキャラクターになっていく雰囲気はあるものの、今のところ晃とも仁とも接点がないので、今後どのように絡んでいくのかが楽しみですね。

何しろ女っ気の無い作品なので、紅一点が欲しいところです。

合唱について

作者の気合が伝わってきます。

仁を通して伝えられる合唱の知識は、非常に専門的でよく分からないもので、正直ここまで必要かと思えるほどでした。

しかし、この専門知識をまくし立てる仁はオタク的で、キャラクターに合っていると言えば合っていると思いますし、専門知識を聞いてよく分からず少しばかり困惑している晃の心情も分かり易く、共感しやすくなっているとも思いました。

合唱に詳しい人が読んだらまた違う感想になるのでしょうか?

総括

さて、1巻ということもありまだまだ序章ですが、今後が楽しみな作品ですね。

続きがとても気になります。

1巻では工業高校ということもあり男の世界を中心に描かれていますが、少しだけ登場している女子生徒が今後どう絡んでくるのかも注目ですね。

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