ヒカルの碁 鑑賞会 漫画編! 懐かしの漫画、書評シリーズ【その2】2巻
塔矢アキラが入部する囲碁部が徐々にギスギスする2巻。(前巻の書評はこちら)
ある意味思い出深いのが、葉瀬中創立祭でヒカルが「これならオレにもできるかも」と詰碁の問題を解くシーン。
「佐為先生のワンポイント解説」と称して詰碁の解説が描かれているのですが、実は僕が初めて見た詰碁の問題はコレでした。
何というか、ヒカルの碁は囲碁初心者にも経験者にも楽しめる要素があって良いですね。
こういうコラムは初心者にとっては囲碁に興味を持つ上でとても役立つものです。
また、使われている棋譜がそのシーンに合った実在のものが使われていることで、囲碁経験者にとっては何でこの棋譜なんだろうと考える楽しみがあります。
例えば、まだ先の話ですが佐為の成長はただ強くなったというだけではなく、棋風改革と言って差し支えないくらい変化している点とか、囲碁を知っている人ならではの楽しみ方ですよね。
こういう囲碁漫画がまた世に出てほしいものです。
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本作の概要
葉瀬中創立祭でのヒカル(佐為)と加賀の対局から、中学生のフリをして大会に出ることになったヒカル。
結果は最後まで勝ち上がったもののヒカルが小学生であることがバレて優勝はできなかったものの、自分でも囲碁を打ちたいと思い始めたヒカルの成長が見られるシーンでした。
やっぱり、何であれ他の人(佐為)が楽しそうに打っているのを見たら、さすがに興味を持たざるを得なかったということでしょうか?
その後、中学生になったヒカルは一緒に大会に出た筒井のいる囲碁部に入部しますが、ヒカル(佐為)を追いかけるアキラは葉瀬中まで押しかけます。
アキラとはもう打たないというヒカル(佐為)を追いかけるため、その実力からしたらありえない行動。海王中学の囲碁部に入部してヒカル(佐為)を追いかけることになります。
ストーカーと揶揄されるほどの執着を見せるアキラの爆誕です。
本作の見所
貴重な佐為の敗北
本作中では普通に対局して敗北した描写が一切ない佐為ですが、事情があって敗北したことが3度だけあります。
1度目は佐為が入水自殺するきっかけになった対局で対局相手のズルがありました。
そして今巻のヒカル(佐為)と加賀の対局が2度目の敗北となります。
たった一手の打ち間違い。
通りかかるあかりに気を取られたヒカルが佐為の指示とは違う場所に打ってしまい一気に形勢が逆転してしまい、その後本気になった佐為が一気に追い上げますが、一歩及びませんでした。
ヒカルのミスがあったとはいえ、貴重な佐為の敗北シーンでした。
昔このシーンを読んだ時は、佐為ってたった一手のミスで負けてしまう程度の強さなのかとも思ったものですが、今なら一手ミスの大きさがわかります。
また、佐為は御城碁(江戸時代唯一の公式戦)で無敗の実績(19勝0敗)を誇る本因坊秀策を通して対局していたという設定があるため、だからこそ作中でまともに敗北することが許されないかったのだと思います。
漫画的にもその方が佐為の絶対強者感がわかりやすいですからね。
ちなみに、本人は露知らないところで貴重な勝利をもぎ取った加賀ですが、不良ではありますが良い奴ですよね。
どういう関係なのかよくわかりませんが筒井のために囲碁大会に出たり、アキラに対する敵愾心も元々年下のアキラのことを碁打ちとして尊敬していたからこそだと考えると嫌いになれません。
ヒカルの才能と初めての大会
加賀との勝負に負けて葉瀬中の生徒のフリをして囲碁の大会に出場することになったヒカルですが、ここで初めて自分から囲碁を打とうとします。
自分が打てると思っていた佐為は非常に残念そうでした。(笑)
そして、ここはヒカルが才能の片鱗らしきものを見せるシーンでもあります。
「1手目から並べるなんてちょっと打てる者なら誰でもできらぁ」
対局中に碁石を落として元に戻そうとする他校生の盤面を1手目から戻してみたヒカルに対するこのセリフですが、佐為を通してし、しかも少ししか打ったことのないヒカルに対して佐為は才能を感じ取ります。
ちなみに、最初にこのシーンを読んだ時には、マジかよ囲碁打てる人凄すぎるだろと思ったものですが、1手目から棋譜を再現することの難易度の高さは実のところ相当なものです。
僕は現在3段程度の棋力ですが、正直とても無理です。
最初から覚えるつもりで打ったとしても100手目くらいまでなら何とか・・といった感じでしょうか?
それも棋譜の内容次第ではもっと少なくなるかもしれません。
だからこそ、初心者に毛も生えていない程度の状態としか思えないヒカルがこれをやってのけたのを見た佐為は、きっと相当驚いたことでしょうね。
しかし、初めてのヒカルの対局シーンですが、加賀もびっくりのヘタクソな内容でした。(笑)
まあ、棋力が才能と努力・経験の掛け算なのだとすると、ヒカルには後者がゼロなので仕方が無いですね。
このお粗末な棋譜も、当時は何がどうヘタクソなのかがわかりませんでしたが・・
あらためて見るとヤバいですね。
有段者と2桁級の対局のようです・・というか実際にそうなんでした。
対局相手も投了を促します。普通ならマナー違反かもしれませんが、これはこんな形勢で打ち続けるヒカルの方がマナー違反だったかもしれませんね。
葉瀬中囲碁部
もう完全に囲碁の虜ですね。
大会を通して囲碁に熱くなってきたヒカルは葉瀬中の囲碁部で筒井さんとともに部員集めに奔走します。
この辺、佐為がどう思っているのかの描写はありませんが、きっと嬉しかったことでしょうね。
僕もそうですが、囲碁が好きな人って、囲碁が好きな人が増えるのをとても嬉しく感じるものであるに違いないと思います。
それから、ヒカルが囲碁に熱くなってきていること示す出来事として塔矢アキラへの拒絶のシーンがありあす。
なぜ塔矢アキラを拒絶することが囲碁に熱くなっていることを示すのか?
それは、人懐っこい性格の今までのヒカルなら普通にアキラを受け入れて、それこそ佐為と打たせるくらいのことはさせていたのではないかと思うからです。
自分も佐為やアキラのように真剣に囲碁を打ちたいと思うようになったからこそ、相応しい実力になるまでは打たないと、そう決意したのではないかと思いました。
拒絶されたアキラの方は何が何だかわからず困惑したことでしょうが。(笑)
海王中囲碁部
アキラへのヒカルの拒絶は、結果的に海王中囲碁部をギスギスさせる要因となります。
ヒカルに拒絶されたアキラは海王中囲碁部に入部することになります。
プロ並みの実力者が中学校の囲碁部に入る。いくら名門囲碁部とは言えその存在は異質でした。
部内実力ナンバー3の青木先輩は良い人でしたね。アキラの入部によってレギュラー落ちする立場ですが、早々にアキラに対局を挑んで敗北を認めます。
何となくですが、自分がさっさと負けて実力差をハッキリさせることでピリピリしたムードを和らげようとしたのではないかと思っているのですが、結果的には逆効果でしたね。
ヒカルしか見えておらず全く遠慮のないアキラにピリピリムードが加速します。
このギスギスとした空気が最高潮になる所で今巻は終わりなのですが、次巻では海王中囲碁部内でのアキラに注目が高まります。
本作の棋譜 教えてLeelaZero先生!
ヒカル(佐為)と海王中三将の対局ですね。
佐為がヒカルに見せるためと言って打った対局で、アキラが「美しい一局だった」と誉めた対局でもあります。
何がどう美しいのかはよくわからないのですが、囲碁の対局を美しいという言葉で表現するのって何か良いですね。
元ネタは岡光雄六段(黒)と神田英七段(白)で1990年の大手合の対局とのことです。
ちなみに、ヒカルの碁を読んで大手合というものの存在は知っていましたが、本家のヒカルの碁鑑賞会を見るまでコミ無しの手合だということは知りませんでした。
さて、ヒカル(佐為)の白番ですが・・
(図1)
ありふれた布石ですが、古碁では見かけない布石ですね。
佐為の白番2手目の星打ちから現代的な布石になりました。
実はこの対局、本作で佐為が初めて星に打った対局で、元ネタの対局も現代の棋譜になっています。
ヒカルのじぃちゃんの星打ちを見て珍しがっていた佐為ですが、ヒカルに見せる対局と言いながらも早速試しているのでしょうか?
近年のAIの打ち方を吸収していくトップ棋士達と同じで、佐為も既に現代の打ち方を吸収し始めているということでしょうか?
やはり強い人ほど新しいものを吸収していくのが早いですね。
(図2)
中盤ですが、LeelaZero先生の評価は黒に傾きつつあります。
佐為相手に優勢を築く海王中三将すごいですね~
白番が上辺大ゲイマにヒラいた場面ですが、何というか渋い手ですよね。
普通、次に右辺をツメられたら辛いので、どうしてもその辺りに目が行く気がします。実際、LeelaZero先生の候補手もその辺りに集中していますね。
仮に上辺に打つとしても、欲張ってもう一歩大きく開きたくなるものです。
こういうのを力を溜めるというのでしょうか?
ちなみに、当然黒が右辺にツメてくる展開になりました。
(図3)
どうしてこうなった!?
図2での形勢は僕にはわかりませんが、図3は少なくとも先ほどよりは白が良くなっているのがわかります。
なぜなら、明らかに黒の勢力圏だった右辺が大きく荒らされて、右上黒は見た目ほど大きくなさそうで形も団子で気持ちが悪い。
しかも右辺で浮かされた形の黒石は、死にはしないもののまだまだ攻められる対象になり得てしまう。
実際、終局図を見るとこの石が相当イジメられたことがわかります。
少なくとも僕にとっては形勢不明の図2状態から、明らかに形勢が向上しているように感じたので、白を持ちたい局面だと思いました。
そしてLeelaZero先生もかなり白が優勢と判断しているようですね。
さて、ここから先は白が順当に打ち進めてそのまま白が勝利することになるのですが、アキラがこの対局のどこを見て美しいと感じたのかは興味がありますね。
やはり、この対局のハイライトは右上から右辺にかけての白の内回しの素晴らしさにあると思うのですが、そこが美しいということなのでしょうか?
総括
これまでは碁打ちとしての佐為やアキラに対して一歩引いた感じで接している所もあったヒカルですが、ついに自分自身でも囲碁を打ち始めました。
これでやっと本当にヒカルの碁が始まったという感じでしょうか?
今後は囲碁を打ち始めたヒカルの活躍にも期待ですね。
ヒカルに拒絶されたアキラの動向にも注目です!
(次巻の書評はこちら)