ヒカルの碁 鑑賞会 漫画編! 懐かしの漫画、書評シリーズ【その2】8巻
プロ試験予選で大人の壁に阻まれそうになるヒカルに注目の第8巻です!(前巻の書評はこちら)
いよいよプロ試験が始まりました。
それに併せて桑原本因坊と緒方挑戦者のタイトル戦など、プロの世界が垣間見えるシーンも増えてきましたね。
それにしても、今まで佐為や同年代の少年少女以外との対局経験の乏しいヒカルが大人相手に動揺しているのが初々しいです。
作中でヒカル(佐為を除く)が同年代以上とした対局といえば、ヒカルのじいちゃんと阿古田さんくらいでしょうか?
苦戦しながらもプロ試験に臨むヒカルに注目です!
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本作の概要
プロ試験に臨めるレベルまでヒカルは成長してきました。
それに併せてプロの世界を垣間見れるシーンも増えてきます。桑原本因坊と緒方挑戦者のタイトル戦もそうですね。
ヒカルがプロの世界に入り込むほどに、プロの世界がよく見えるようになってくるのもヒカルの碁の面白い部分だと思います。
ヒカルと佐為が意図せずプロ試験に臨もうとする強豪である門脇さんの鼻っ柱をへし折ってライバルを減らしたりしつつも、プロ試験の予選がついに始まります。
院生試験の時もそうでしたが、意外とメンタルの弱いヒカルがどう乗り越えていくのかが見ものです。
本作の見所
佐為の指導
短いですが意外と珍しい佐為の指導シーンがあります。
今までは良しとしていた安全だけど99点の手より、間違えやすいけど100点の手を選ぶようにヒカルに指示します。
いや、連載当時は言葉通りより点の高い手を選べという意味で捉えていましたが、実際には佐為の言いたいことはそういうことではないのだと思います。
というのも、そもそも囲碁の打つ手を点数に換算することは難しいはずで、1点程度の違いは恐らく佐為クラスの天才であっても判断できるようなものではなく、そのことは佐為もわかっているはずだと考えるからです。
だから佐為はこの言葉で、例え難しい戦いになろうとも厳しい手を選ぶようにしていかなければならないということをヒカルに伝えたかったのだと思います。
「でも もうヒカルはそれをしのいでいかなくてはね」
最後のこのセリフがそれを物語っていますね。
そして、ヒカルもそれを理解しているようで、佐為も弟子の成長が嬉しそうです。
佐為VS門脇
久しぶりの佐為の被害者。
外来でプロ試験を受けると噂の門脇さん。肩慣らしにと院生と思われるヒカルに声を掛けるのですが・・
行きずりの対局だと思い込んだヒカルが佐為に打たせてしまいます。
結果は佐為の圧勝なのですが、この時すでに相手の力量くらいはわかる程度に成長しているヒカルには門脇さんが只者ではないことに気付きます。
只者ではない門脇さんに必要以上に興味を持たれないように、ヒカルは早々に立ち去ろうとするのですが・・
「碁を始めてどれくらいになる?」
「千年」
格好良い名言なんだけど、なんだけど!
明らかに門脇さんに興味を持たれてしまった失言でもありましたね。
まあ、後にヒカルを追いかけてきた門脇さんはアキラよりも大人だったので、ヒカルにとっては不幸中の幸いだったということでしょうか?
ともあれ、ヒカルは知らぬ間にプロ試験のライバルを一人減らしてしまいました。
この対局が無かったら門脇さんがプロ試験に合格していた可能性もあるわけで、意外と今後の展開に大きく影響する出来事でした。
桑原本因坊と緒方挑戦者
連載当時、何となく囲碁のプロに対して抱いていたイメージそのもののイメージの桑原本因坊。
囲碁の世界をある程度知っている今なら、プロ棋士の強豪といえば年若い青年のイメージが強くなっていますが、当時は囲碁のプロ・タイトルホルダーと言えばよく知りもしないで桑原本因坊のようなおじいちゃんをイメージしていました。
しかし、実際にこんなおじいちゃんが現役でタイトルホルダーになっていたら、囲碁の歴史に残るレベルで凄いことだったりします。
本因坊戦で緒方挑戦者を翻弄する桑原本因坊がマジで格好良いですね。
こういうジジイ、結構好きです。
「新しい時代はもうそこまで来ているんだ」
そして、桑原本因坊と相対する緒方挑戦者。
若い世代を引っ張っていく筆頭感が出ています。
ヒカルとの接点は少ないですが、院生試験の時然りヒカルに目をかけていたりなど、下の世代をとても気にしている棋士という印象が強いですね。
プロ試験予選とヒゲ男
プロ試験予選でヒカルは、外来受験者の椿敏郎に翻弄されてしまいます。
ヒゲ男と呼ばれるほどの野性的な外見。
周りがビビるほどの大きな声。
対局開始直後に30分も離籍する奔放さ。
昼休憩には強引にメシに連れ出し、打ち掛けの経験のないヒカルに手番の話をして動揺させる。
その全てがヒカルの動揺に繋がり、盤外でも盤上でもペースを掴むことができず、結果的に負けてしまいました。しかも、立て直すこともできずに2連敗。
その後、相性の良いフクと対局して1勝を掴み、椿が勝ち上がったことで不在になったことで4戦目も冷静に打つことができて2勝。そして、最後は手空きで不戦敗。
何とか予選を勝ち上がることができましたが、メンタルの弱さを克服できたわけではありません。
このままではプロ試験本線は不安な状況ですね。
碁会所でのチーム戦
和谷の提案で、ヒゲ男のような奴との対局に慣れるために和谷と伊角さんと碁会所に行くことになったヒカル。
碁会所のオジサン相手に置石を置かせてのチーム戦。
年長の伊角さんが気苦労してそうですね。(笑)
ちなみに、ヒカルの碁においてもかなり人気の高いキャラクターである伊角さんですが、もともとだいぶ印象が薄かったのにこの辺から一気に存在感を増してきます。
今後もちょくちょく活躍するので未読の方は注目しておきましょう!
ヒカルの保護者たち
プロ試験を受ける話を両親にも話していなかったヒカル。
おいおい・・(笑)
ヒカルのお母さんもだいぶ心配そうです。
そりゃそうですよね。
ずっと囲碁をやっててプロを目指していた子供の親っていうのならまだしも、急に囲碁を始めた息子が1年ちょっとでプロ試験を受けるとか言ってたら「はっ!?」って普通はなります。
ヒカルのお父さんやじいちゃんは理解があるのか放任主義なのか、よくわからない反応っぽいですが、お母さんの気苦労が知れます。
本編からはちょっと外れたエピソードですが、よくわからない世界に突然飛び込みだした息子と、そのことを知らなかった両親という構図が面白かったったので見所に挙げてみました。
本作の棋譜 教えてLeelaZero先生!
今回はプロ試験予選、ヒカルVS椿敏郎の対局です。
元ネタは鈴木源之丞(黒)と若山立長(白)の古碁となります。
プロ試験の空気感に飲まれ気味のヒカルの対局にはどのゆな棋譜が使われているのでしょうか?
ヒカルの動揺が現れているような棋譜が使われているので、その辺に注目していきたいと思います。
(図1)
黒の右上のツケがちょっと辛そうな手だと思いました。
ハネてきてくれたら良さそうですが、ツケた石の左にノビられて出来上がった形が気持ち悪いですね。
後から赤丸を付けている位置のノゾキが打たれるのが更に辛いですね。
中央に向かって厚みを作っているかのような打ち方ですが、上辺の白も弱くないのであまり働かなさそうです。
実際、LeelaZero先生の示す候補手は左上から上辺白に迫るような手になっていました。
この辺もヒカルの動揺が現れている所なのでしょうか?
(図2)
左上の白のツケは作中に盤面が描かれていましたね。
それに対する黒の受け方が、劣勢な局面なのに戦いを避けた手堅すぎる印象を受けました。
LeelaZero先生の示す手はツケた白石の左にハネる手なのですが、これは盤面が複雑化しそうな手ですけど劣勢ならこういう厳しい手を選ぶべきなのでしょうね。
いや、僕程度の棋力ではまだまだ形勢不明の局面なのですが、流れだけ見たら何となく白ペースになっていることくらいはわかりますし、実際LeelaZero先生の勝率は既にかなり白に傾いていました。
ちなみに、ペースを掴んでいる方が優勢という形成判断はある程度参考になると思います。ずっとペースを掴んでいると思っていたら負けていたということも稀によくあるので絶対ではないですけどね。(笑)
しかし、プロを目指すヒカルには恐らく形勢がわかっていて、それでも手堅くなってしまっているのか、それとも形勢判断できないくらいに動揺してしまっているのか、いずれにしても普通の精神状態では無いということをこの棋譜で表したかったのだと思われます。
(図3)
最もヒカルの動揺・・というか手控えしているのが現れていそうな手が右上のヌキではないでしょうか?
左辺の弱い黒石が、ただでさえ白の方が一歩先に頭を出している所を手抜きしてまで打つような手ではなさそうな気がします。
むしろ、左辺は白の方が弱いんだと主張して、左辺黒を強化しつつ左辺白を攻めるくらいの気持ちで打っていればまだ形勢は難しかったのではないでしょうか?
実戦は右上をヌイた後、左辺黒を攻めながら完全に白ペースの展開になって、そのまま終局してしまったという印象でした。
総括
辛くもプロ試験の予選を突破したヒカル。
本線に向けて和谷、伊角とチームを組んでの特訓。碁会所荒し(?)も始まりました。
本線までにどこまでヒカルが成長できるのかに注目ですね!(次巻の書評はこちら)