あるいは 迷った 困った

漫画、ラノベ、映画、アニメ、囲碁など、好きなものを紹介する雑記ブログです。

『ガンバ!Fly high(11)』逆転に次ぐ逆転劇が熱いアジア大会(ネタバレ含む感想)

 

アジア大会編の序盤において日本はパッとしない成績で沈んだ空気が漂っていましたが、決勝では今までのただ完璧なだけの体操とは違う嵯峨の熱の入った演技、そして簑山の怪我によって藤巻駿がレギュラー化したことをキッカケに日本チームの一体感が高まるとともにジワジワと首位を走る中国チームに迫っていきます。

このアジア大会のエピソードは、オンリンピックで金メダルを取るという藤巻駿の目標が俄然現実味を帯びてくるガンバ!Fly highにおける重要な節目ですが、それに相応しい素晴らしい展開でした。

また、結論を言ってしまえば今回は惜しくも銀メダルという結果になってしまいましたが、日本チームに勝利した中国チームにもまたドラマがあって、冷たい印象があるものの実は誰よりも熱い王景陽の勝利への執念に、最後に逆転を決めた楊修平に影響を与えたのが同じ中国チームの王景陽だけではなく藤巻駿であったというのも面白いところです。

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本作の概要

簑山の怪我をキッカケにレギュラー化した藤巻駿。団体戦のプレッシャーの中で簑山のために決めたトカチェフ前宙で日本チームに活力を与えます。

そこからは中国チームとの一進一退の点取り合戦が始まります。

しかし、ポイントゲッターとして活躍する藤巻駿の左足に異変が発生し、演技を進める内にそれが徐々に顕在化してきます。

本作の見所

ポイントゲッター

簑山の怪我は考えようによっては藤巻駿に全種目演技させるためのメタい意図のある怪我なので不遇と言えば不遇な扱いです。だからこそなのか、藤巻駿のオリジナル技であるトカチェフ前宙は簑山のためにという理由で団体戦のプレッシャーの中決められます。

そして、アジア大会の終了後に簑山は引退してしまうのですが、この流れはもしかしたらいわゆる世代交代を描いたものだったのかもしれませんね。アジア大会のエピソードは若手の選手にチャンスを与えるものでしたが、もっとメタい視点を入れるとオリンピックで活躍させたいこれまでの藤巻駿たちのライバルを成長させるためのものだったのだと思います。

ともあれ、フル出場することになった藤巻駿は日本チームのポイントゲッターとして活躍し始めます。

王と藤巻の二人が勝敗のカギを握ると、そこまで称されるようになるのですがそれに過剰反応したのが王景陽です。

気にはしつつもまだまだ藤巻駿のことを甘い選手だと見ている王景陽は、自分とそんな藤巻駿が同列に語られていることに苛立ちを見せます。

さて、こういう風に主人公側のキャラクターを舐めているようなところがあるキャラクターって嫌われ役みたいなところもあると思うのですが、王景陽の場合は口だけではない何かがあって言いしれない魅力があると思います。

そんな王景陽と藤巻駿というポイントゲッター同士の点取り合戦が、得点だけ見たら王景陽の方がかなり上を行っているように見えるものの興味深くはあります。

藤巻駿の怪我

スポーツ漫画において怪我なのに無理して頑張るという展開はひとつの定番ですが、怪我なら安静にしなきゃダメだろうという常識がありつつも熱くて格好良く感じられる展開ですよね。

怪我と隣り合わせだと思われる体操という競技を描いているにしてはガンバ!Fly highにおいては珍しい展開ですが、藤巻駿が足に違和感を感じつつも、そして徐々に痛みに耐えながら演技する姿は格好良いです。

とくに印象的なのは怪我に気付いた内田の反応です。

平成学園の仲間として一緒に戦っている時ならまだしも、日本を代表して戦っている藤巻駿をただの観客でしかな自分たちには止められないと、藤巻駿のことを案じつつもショックを受けている姿が良いですね。

しかし、日本代表として戦っているとはいえ遠くに行ってしまったわけではなくちゃんと声援の届くところにいる。怪我を我慢しながら演技しているとはいえ藤巻駿がしているのはあくまでも平成学園の楽しい体操なのだと諭したのは相楽まり子。さすが藤巻駿への理解が深いです。(笑)

そして、最後の跳馬の演技では助走の途中で倒れ込んで今いながらも、藤巻駿のことなどほとんど知らないであろう観客からの声援を受けて王景陽と同じ技をキッチリと決めます。

そのことは、藤巻駿のような甘い選手には跳べないと思っていた王景陽をも驚かせました。

中国チームの活躍

中国チームの王景陽に最初から好印象を抱いた読者って少ないような気がするのですけど、アジア大会編を通して氷の男と称される王景陽の冷たいだけではない確かな熱さが感じられて、とても魅力的で格好良く見えるようになってきます。

相手を舐めたように見下し、そもそも相手にすらしていなさそうな態度ですらありましたが、それはあくまでも自分自身の努力に絶対的な自信があるからでした。

その証拠に、相手がそれなりの成果を示した時には興味を持っている様子でしたし、藤巻駿の決死の跳馬で日本チームに逆転されて、しかも自身の演技を以ってしても日本チームの優勝ムードを覆せなかった時には敗北感に涙を流しました。

最も涙と縁遠そうな王景陽だけが中国チームの中で唯一涙を流したという事実は、それだけ王景陽の中に熱さがあったという証拠なのだと思います。

そして、決死の跳馬を見せた藤巻駿や、誰よりも勝ちに拘った王景陽に体操選手として負けたくないと土壇場の局面で新技を披露した楊修平もまた素晴らしい。

成功率10%程度の新技の成功で中国チームはギリギリ逆転して金メダルを獲得することになるのですが、そういう意味では9割は勝利していた日本チームも、1割の勝利を手にした中国チームも悔いのない大会だったのではないでしょうか?

いや、正確には王景陽だけは大きな敗北感を持っていたことは間違いありません。

その証拠に、後々に王景陽はオリンピックに向けて更に完成された体操選手へと進化してきます。そして、その辺はもう少し先の見所になってきます。

オリンピックに向けて

アジア大会を経て藤巻駿の体操選手としての知名度は大きく増し、いよいよオリンピックへの道筋が見えてきました。

アジア大会の予選の前にはインターハイに出場しようとしていてそこまで世界を意識するようなことは無かったことを考えると大きな進歩ですね。

そして、注目すべきはアジア大会の団体銀メダリストになった藤巻駿に触発された平成学園の他の選手たち。新堂キャプテンも三バカも大学生になりましたが、そこで個々に戦っていく展開に突入します。

総括

いかがでしたでしょうか?

アジア大会の決着、そして触発される平成学園の内田に真田。いよいよオリンピックに向けて動き出すことになり面白くなってきます。

平成学園がチームとして戦う展開も面白かったですが、今度は代表枠を巡るライバルになるわけですね。

信頼関係のあるライバル同士の戦いもまた興味深いです。

『いじめるヤバイ奴(7)』最早いじめハーレム漫画ですね(ネタバレ含む感想)

 

いじめるヤバイ奴の生徒会編にはこの7巻で決着が付きますが、その影響で矢場高校は姉妹校である場井高校に吸収合併されることになります。

そして、本物の一流校である場井高校には新たないじめエピソードが待っています。

そして、これまでも加藤、如月と仲島君のいじめライバルが登場してきましたが、如月の上位互換の様相を呈する新たないじめライバルが登場します。

次々と登場するいじめの加害者に被害者たちの数々は、さながらハーレム系ラブコメのヒロインのようですらあります。もちろん、さすがに誰かとエンディングを迎えるようなことはないでしょうけども。(笑)

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本作の概要

いじめの証拠の動画が全校生徒の前で流されてピンチだった仲島君でしたが、入念な下準備と白咲さんや青山さんの助けもあり何とか如月に勝利しました。

しかし、生徒会によるいじめの発覚は学校の吸収合併というあまり聞いたことのないほどの大きな影響をもたらします。

そして、合併先の高校には新たないじめの世界が待ち受けていました。

本作の見所

決着と二人目の廃人

仲島君のいじめは既に周知の事実なのではないかという気もしなくもないのですが、それでもやはりそれを知らなかった人を含めて大きく広められる影響は大きいのかもしれません。

そんな状況で、生徒会の陰謀が渦巻くミスターコンテストの舞台で仲島君のいじめの動画が流されてしまうのは非常にマズイ状況なわけで、というか元々この動画が流されることを阻止しようと動いていた仲島君はこの時点で敗北と言っても過言ではないくらいの状況だったはずで、まさに如月の思い描いた通りの展開を辿ってしまっているように見えます。

しかし、何か逆転の手がありそうな様子は6巻時点からありましたが、その答えは中々に突飛なもので少し笑えました。

なんと仲島君は、ミスターコンテストの会場内を自らのいじめを見せつけることで恐怖心を植え付けた生徒で固め、それ以外の者を入場させないように制限していたのです。

まあ、いくらなんでもそこまでの人数の人心をコントロールするのは難しいだろうというツッコミどころはあるものの、何でもいじめで解決しようとする一貫性があるのは本作品の良いところだと思います。

それに前巻では田中に加藤の頑張りが目立ちましたが、人が変わったような緑田さんに機転を利かせる白咲さん、それに白咲さんの計算通りに暴走する青山さんと、考えてみれば過去の主要キャラクターの総力戦みたいな感じで生徒会のいじめを公なものとした流れも面白いですね。

ヤバイ奴らばかりの漫画ですけど、ラスボス相手に過去の敵も仲間になって立ち向かう展開は少年漫画的な感じがしますね。いや、どう考えてもそういう展開の他の作品と同じ印象は無いのですけど、構成だけみたらそうなっているところが興味深いところです。

とはいえ、仲島君に敗北したものの如月の心は折れておらず、いつかは逆襲しそうな雰囲気がありました。

しかし、そこにトドメを刺したのは白咲さん。加藤以上の廃人へと如月を追い込みました。

もしかしたら、仲島君のいじめライバルには仲島君自身が勝利するものの、そこに白咲さんがトドメを刺して廃人にするというのが本作品のテンプレ的な展開になっていくのかもしれませんね。

学校の吸収合併と新たないじめ対決

生徒会のいじめが周知になった影響で矢場高校は姉妹校である場井高校に吸収合併されてしまいます。

そして、本物の一流校である場井高校には歪んだ選民思想が渦巻いており、そんな思想に基づくいじめが横行していました。

それもまた生徒会が広めた思想らしいのですが、底辺の者を貶めることで上位の者の成績が向上しているという成果があることで教師すらその選民思想に捉われているというまるで異世界のような環境がこれからの舞台となります。

矢場高校でのいじめエピソードにおけるラスボスは生徒会の如月でしたが、その上位互換とも言えるような場井高校の生徒会がラスボスというのは面白い展開ですね。

徳光貞志というのがそのラスボスの名前ですが、如月のように隠れていじめをしているのではなく、むしろいじめを正当化していじめられる側にすらそのことを理解させてしまっているヤバイ奴です。

そして、そんな徳光の考えを理解して配下に加わろうとしているのが意外にも緑田となります。

矢場高校と場井高校の吸収合併は今までの主要人物の立ち位置にも少なからず影響を及ぼすのだと思いますが、その辺がしばらくは注目すべき点なのではないでしょうか?

立ち位置の影響といえば、場井高校の生徒でありながら徳光の考え方に反発心を持っている黒宮さんの登場も気になる点です。なんと黒宮さんは白咲さんの中学の同級生で、過去を知っているであろうキャラクターだったからです。

現時点では徳光が仲島君のことを意識しているような描写はありませんが、恐らく今後はこの二人のいじめ対決という展開になっていくのだと思われます。そして、そこには黒宮さんが当然絡んでくるわけなのですが、その影響で謎めいた白咲さんの思想の謎が少し分かってきたりするのではないかと推測します。

総括

いかがでしたでしょうか?

本作品は正直なところ僕が漫画という媒体に求めているようなタイプの作品ではない気もするのですが、謎の中毒性があって続刊が出る度に読み続けてしまいます。

いじめというテーマに触れると少なからず陰鬱な気持ちになりますが、あまりにも浮世離れしたヤバさがあるので逆にエンタメとして楽しめるのかもしれませんね。ヤバさが抑えられてリアリティが出てきた方が読んでいて暗い気持ちになってしまうかもしれないという考え方です。

ともあれ、そんないじめるヤバイ奴においてずっと謎めいた存在だった白咲さんでしたが、6巻くらいから徐々にその謎めいた部分を明らかにしようとする動きがある気がします。

明らかに白咲さんと対比した名前の新キャラ黒宮さんがどういう働きをするのか、それが今後の気になるポイントです。

『幽遊白書(8)』短めだけど濃密な名作の感想(ネタバレ注意)

 

暗黒武術会編もいよいよクライマックス。浦飯幽助と戸愚呂弟の最終決戦を残すのみとなりました。最後らしく今までにない長い長い戦闘シーンになりますが、もちろんただ戦っているだけではなく一波乱も二波乱も起きるので飽きることはありません。

そして、暗黒武術会編から間を置くことも無く次は魔界の扉編が始まります。

暗黒武術会編が戸愚呂編だとしたらラスボスの名前から仙水編とも呼べる魔界の扉編ですが、今までの『幽遊白書』の力が強い方が勝利するといったシンプルなバトルではなく、工夫というか戦術の幅が広がるような能力が登場したことでトリッキーさを帯びてきます。

それは同じく冨樫義博先生の次作となる『HUNTER×HUNTER』の念能力を使ったトリッキーなバトルを彷彿とさせますが、なるほど『幽遊白書』の時点でそういう方向性の傾向はあったのだということが分かって興味深いですね。

いずれにしてもこの8巻では既にそのトリッキーなバトルが読める点に注目してほしいです。

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本作の概要

暗黒武術会編の決勝戦中の決勝戦浦飯幽助と戸愚呂弟の死合がついに始まります。

互いが互いにハンデを付けた状態から徐々にヒートアップしていく展開が熱いですが、最後には互いに全てを出し合った決着となります。

そして、暗黒武術会が閉幕してその後、間髪入れずに浦飯幽助の誘拐事件が発生します。暗黒武術会の優勝Tのメンバーが誘拐されるという衝撃の事件から次の魔界の扉編が始まります。

本作の見所

ハンデを付けた状態で試合開始

戸愚呂弟は『幽遊白書』の作中では珍しく自分の強さを分かりやすく数値で示しているキャラクターとなります。

垂金の別荘では20%の力で戦う戸愚呂弟に浦飯幽助は苦戦し、その後暗黒武術会に誘われた際には60%の力に恐怖します。暗黒武術会での戦闘シーンでは45%の力で圧勝するところを見せつけていますが、対戦相手もこれまで浦飯Tが苦戦してきたチームと同レベルクラスであると仮定すれば実力差が分かりやすいですね。

それに、幻海を相手にした時こそ相手への敬意から80%までの力を出していますが、浦飯幽助に力を継承した後とはいえ幻海も45%の戸愚呂弟を相手に苦戦しています。

そういうわけで45%の戸愚呂弟にすらまともに闘えたキャラクターは他にいない状況なわけですが、果たして幻海から力を継承した浦飯幽助はどうなのかというところ。

結果は80%の戸愚呂弟と良い勝負を繰り広げることになり相当なパワーアップを遂げたらしいことが垣間見えるのですが、戸愚呂弟は80%と言及している通りまだ全力ではありません。そうすると浦飯幽助の方が不利なのか・・と思いきや、どうやら浦飯幽助も呪霊錠という幻海に施された修行用の技を身に付けたまま闘っていました。

つまり、両者とも自らにハンデを付けた状態で試合していたということで、呪霊錠を外した浦飯幽助は80%の戸愚呂弟を圧倒し、ついには100%の実力を引き出すまでの強さを見せつけます。

このように両者が徐々に隠していた手札を順番に見せていくというか、ギアを上げていくような展開はもどかしくも熱いですよね。

戸愚呂の全力と桑原の犠牲

さて、80%の戸愚呂弟は圧倒した浦飯幽助でしたが、100%の戸愚呂弟は単に20%力が増したというだけではない凄みを感じるほどに進化し、性格的にも分かりやすく冷酷なものへと変わっていきます。それに浦飯幽助は苦戦するのですが、戸愚呂弟の目的は単なる勝利ではなく自分と闘える者を見出すことです。

つまり浦飯幽助の力を引き出す事なわけで、ここで今までの戸愚呂弟であればしなかったであろう浦飯幽助の仲間を犠牲にする方法を取ろうとします。

そしてそのターゲットに選ばれたのは桑原で、浦飯幽助は必死で戸愚呂弟を止めようとするのですがそれも敵いませんでした。

そんな自分が許せない怒りと哀しさから浦飯幽助は100%の戸愚呂弟に迫るほどにパワーアップするのですが、よくある怒りでパワーが爆発するみたいな展開とは少し異なっているのが興味深いところです。

それに浦飯幽助はどこかで戸愚呂弟の強さに憧れていた部分があったようですが、桑原の犠牲で得た自分の強さに哀しさを覚えたからか、全てを捨てて強さを手にしようとする戸愚呂弟の考え方をここで始めて否定します。

しかし、これは桑原の犠牲で手にした自分の強さも否定しているわけで、そんな哀しい強さは不安定でパワーアップした直後は闘う姿勢があまり見えないような状態になっていました。

ですが、自分はもう捨てないと決意したところで本当の意味で吹っ切れます。

単に仲間が死んだから怒りで強くなったというよりも、こういう葛藤があってはじめて力を発揮できるという展開が面白いですよね。

決着とその後

さて、浦飯幽助が吹っ切れて強くなってついに全力の戸愚呂弟とまともに闘えるようになりましたが、その決着は互いに全てをぶつけた上でのギリギリのものでした。

ギリギリだったわりには吹っ切れた後の浦飯幽助には謎の安心感があったのが興味深いところです。

ともあれ、言うまでも無く浦飯幽助の勝利で暗黒武術会は幕を閉じ、実は戸愚呂弟が殺しきれていなかったけど死んだふりをしていた桑原も復活して大団円・・って、幻海は戸愚呂弟に殺されたままじゃん!

実は幻海の遺体は、浦飯Tが優勝した場合に幻海の復活を望むであろうと予想してコエンマが冷凍保存されていたこともあり、浦飯Tの優勝後に復活を遂げることになるのですが、この遺体を保存しておくことを提案したのは敗者である戸愚呂弟だったということらしい。そこからは戸愚呂弟が実は最初から自身が負けることを、ただし全力を出し尽くした上で負けることを望んでいたことが窺えますね。

「たいしたもんだよ。あんたのバカも。死んでもなおりゃしないんだから」

そして、幻海がよみがえる前にあの世で地獄への道へと向かう戸愚呂弟と交わした会話がとても印象的でした。

戸愚呂弟は自分のポリシーを通すために手段を択ばないキャラクターだったものの、死んでも自分を負かした対戦相手の心配をするようなところもあるからこそ魅力的にも感じられるキャラクターなのかもしれません。

不思議な能力を持った三人組

暗黒武術会編で戸愚呂弟にまで勝利した浦飯幽助ですが、読者視点でも最早敵なしの強さになっているように感じられます。

しかし、そんな浦飯幽助が人間の不良風の学生に誘拐されるという事件が発生してしまいます。そもそもが浦飯幽助は霊能力者になる前の普通の人間だった頃ですら無敵の不良だったわけなので、その頃であったとしても意外に感じられる事件ですね。

もちろん、ただの学生が浦飯幽助を誘拐できるはずもなく、何やら不思議な能力を持っているようなのですが、その能力がまた今まで戦ってきた妖怪の能力と比較しても何だか掴みどころのない不思議なものになっていました。

そして、浦飯幽助を助けるために桑原、蔵馬、飛影、ぼたんの4人は誘われるままに浦飯幽助が捕らわれた洋館へと向かいます。

「この家に入った者は決して『あつい』と言ってはいけない。もし言えば・・」

洋館の入り口にはこれまた不思議な忠告の貼り紙があるのですが、なんと本当に『あつい』と言ってしまったら魂を抜き取られてしまうことになります。面白いのは『熱い』のような意味のある言葉だけではなく『あ』と『つ』と『い』を続けて言ってはいけないという厳しめのルールになっている点なのですが、これに蔵馬以外の三人は全員やられてしまいます。

この行使者の設定した禁句を言った者の魂を抜き取る能力の持ち主である海藤優は偶然にも蔵馬の同級生で、蔵馬なみの成績を誇るインテリ優等生でした。というわけでこの二人のインテリ対決になるのですが、両者ともにジッと座ったまま徐々に会話が無くなっていくという言葉にすれば地味な勝負なのに妙な緊張感のある対決になっていました。

まさに今までの妖怪との戦いでは見られなかった特徴的な対決ですが、それだけに海藤優と蔵馬のこの対決は『幽遊白書』の全編通してもかなり記憶に残るものだったのではないかと思います。

総括

いかがでしたでしょうか?

暗黒武術会編とは打って変わった雰囲気で始まった魔界の扉編ですが、『HUNTER×HUNTER』が好きな人ならこのエピソードを最も面白いと感じるのではないかと思います。

また、相手が妖怪ではなく人間であるという点も今までと異なる興味深いところで、どんな戦いが描かれることになるのかが楽しみですね。

『ヒカルの碁』の名場面、名台詞から囲碁を学ぼう!(その5)

ヒカルの碁に登場するキャラクターは週刊少年ジャンプの連載作品にしては尖った部分のないいわゆる普通の人という印象が強いです。だからといって没個性なわけではなく、誰も彼も魅力的なキャラクターばかりで、だからこそ共感しやすいところも多いのではないかと思います。

例えば、ヒカルにとっては院生時代の先輩というか兄貴分的なキャラクターである伊角さんにしても、いわゆる普通の好青年といった雰囲気のキャラクターですが、その割には随分と人気のあるキャラクターでもありますね。特にプロ棋士の中にファンが多いようで、実力がありながらプロ試験を突破できずにくすぶっている姿が共感を呼ぶのだと思われます。

そんな伊角さんのプロ試験のエピソードにおける最も印象的だった出来事から学ぶ教訓について本記事では触れていきます。

今回の名場面・名台詞

伊角さんがプロ試験でヒカルと対局した際に一度指から離れた石を打ち直したシーンについて

ヒカルの碁の作中には数多くの対局が描かれていますが、最も印象に残るミスをしたシーンといえば伊角さんが対局相手であるヒカルを気にするあまり自分の意思に反した手を打ってしまい、慌てて打ち直したが指が碁石から離れてしまっていたので反則となってしまったシーンなのではないでしょうか?

そして、このシーンから学ぶことは大きく二つあるのではないかと思います。

それは

  1. たった一つのミスで形勢は入れ替わるということ
  2. 集中力を欠いている状態では考えられないようなミスが起こり得るということ

の二つです。

一つ目はある程度囲碁の経験を積んだ人であれば実感していることかと思いますが、囲碁というゲームには良い手はあっても勝因となる手は多くの場合存在しません。いわゆる良さそうな手を打っても、それを後に繋げられるか否かは純粋な実力でしかないからです。

しかし、勝因となる手は無くても敗因となる手は山ほど存在します。後に繋げられなかった良さそうな手などは多くの場合はやりすぎてしまった敗因の手であると言えますね。

より多くの、そしてより大きなミスをした方が負けるゲームこそが囲碁であると聞いたことがありますが、それはまさにその通りであることを何局も対局を重ねてきた人であれば実感できるところだと思います。

勝っているのにやりすぎて逆転負けしてしまったり、もうダメだと諦めていたところに相手のミスがあって逆転勝ちしたり、そんなことは日常茶飯事ですよね。

トッププロの対局ですら最後の最後のミスが勝敗に直結することは珍しくありません。

そういうわけで囲碁には明確な勝因となる手はほぼ存在しえないわけなのですが、その証拠に一流の打ち手であればあるほど自らの勝利を「運が良かった」と称しますよね。

例えば、近年のNHK囲碁トーナメントでは「今日の一手」という勝者側の解説が最後にありますが、日本囲碁界の第一人者である井山先生は必ずといって良いほど自らの勝因を述べることはなく、反省点を述べています。これこそ囲碁というゲームの本質がミスを排するところにあることを示しています。

そして、そんなミスが起こり得るのは何かしら集中力を欠いている時であることが多いです。

勝ちを意識した時なんかが集中力を欠きやすい代表的なポイントでしょうけど、今回の伊角さんの場合は盤面以上に対局相手を意識しすぎたところで集中力が逸れたという感じでしょうか。

いずれにしても、どんなに強くなっても一瞬の集中力の途切れが大逆転負けに繋がるようなことは珍しくありません。というか、こういう集中力の途切れは勝っている側に起きることが多いような気がするのですが、それもまた興味深いポイントだと思います。

これは勝っている時こそ気を緩めてはいけないという教訓にもなっているのではないかと思います。

ちなみに、集中力を欠いてアテ間違えたというエピソードについてどのように感じましたか?

そんな自分の意思に反して間違えるようなミスはあり得ない。そんな風に感じた人も多いのではないかと思います。というか、僕自身もこのエピソードは教訓ではあってもそうそう起こり得るようなことでは無いと思っていました。

しかし、つい最近ネット対局中に自分の意思に反した手を打ってしまい大逆転負けするという経験をしてしまい、それでこの伊角さんのエピソードを思い出した次第でした。

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参考までに紹介するとこの終局図。幽玄の間の4段戦で、黒番の僕の中押し負けとなります。右辺の白石を仕留めていた種石4子を取られてしまっては地も足りませんし中央の黒の一団も弱くて攻められそうなので投了も止む無しですね。

しかし、149手目でノビた手でタケフ(149手目の右上。上図の赤丸部分)にしておけば何事もないどころか黒は負けようのない展開でした。

なら打っている時に気付いていなかったかといえば、実はこの局面は数手前に想定していた通りの図で、その時にはタケフに打つことを想定していました。しかし、ほぼ白の投了待ちの形勢だったところで深く考えずに手拍子でサラサラ打っていた時についノビてしまって打った瞬間に「あっ!」と気付いたわけです。

ネットなので伊角さんのようにそっとタケフに打ち直すこともできません。(笑)

集中力を欠いていると伊角さんのような間違いが発生することもあるのだという実体験でした。

こちらは、ヒカルの碁囲碁を覚えたい人にオススメの書籍です!

単にキャラクターの知名度を借りただけのような書籍ではなく、この3冊で基礎の基礎から相当に実践的なところまでをキッチリ楽しく学べる良書で、真面目に学べば有段者になるまでの知識が詰まった内容になっていると思います。

『服を着るならこんなふうにfor ladies』男だけどレディース版を読んでみた感想(ネタバレ注意)

 

服を着るならこんなふうにとは、ファッションをテーマにした珍しい漫画作品です。主人公の妹でファッションに詳しい大学生の佐藤環が、ファッションに苦手意識のある20代会社員の主人公の佐藤祐介に、ファッションについて教えたことで徐々にその奥深さに気付いてハマっていくというのがストーリーの主軸になっています。

兄妹のキャラクターはなかなか魅力的だし、話の内容も面白いのですけど、何より興味深いのがかなり分かりやすい初心者向けのファッションの教科書のような作品になっている点です。

それこそ初期の祐介のようにファッションに興味が無かったり苦手意識のある人が読んだとしても、興味を持つキッカケにもなりますし、どうやって洋服を選べばよいかの基礎知識を身に付けていくことにも繋がります。

これは以前本編のレビューをした際にも言及したことではあるのですが、オシャレが苦手な人に対して「ファッションってこんなに奥深くて楽しいんだよ」と伝えようとしているのが服を着るならこんなふうにという作品なのですね。

作中にはハイブランドの高価な洋服や小物も登場しますが、基本的にはごくごく一般的な金銭感覚の人でも真似しやすい範囲でファッションを教えてくれるのが本作品の良いところだと思います。

しかし、街中で様々な性別や年齢の人を眺めてみれば一目瞭然のことではありますが、ファッションは性別や年齢によってかなり違ったものとなります。とりわけ女性のファッションは、ごくごく普通の一般人であってもかなりの多様性があるものですよね?

つまり、主人公が20代男性のサラリーマンである服を着るならこんなふうにでは、そんな多様性のある女性のファッションまでは網羅されていないわけです。恐らく、本作品の読者にしても20代から30代の男性が多いのではないかと予想します。

とはいえ、面白い上にファッションの教科書としても秀逸な作品なので、女性ファッションをテーマにしたようなエピソードも需要がありそうだと感じていましたが、実際に同じ世界観の別作品として刊行されたわけなので需要はあったのでしょうね。

僕は男なので教科書としては使えませんが、それでは面白い作品ではあるので読んでみました。

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本作の概要

押さえるところさえ押さえておけばまあ失敗することのない男性のファッションと異なり、あまりにも多種多様で難しそうな女性ファッションですが、街中でよく見かける服装の意味合いが分かったり、実は男性のファッションとも基本的な部分で通じる所があることが分かったり、興味深い内容になっています。

しかし、男性のファッションを勉強中で女性のファッションなど分かるはずもない本編の主人公はほぼ不在です。(笑)

本作の見所

レディースファッションは難しい

メンズファッションと比べて情報量が多く、服だけではなくメイクや髪形にアクセサリーも男性よりずっと気を使わなければいけない。

そう言って本編の主人公である祐介は少し顔見せして、男性視点から見た女性ファッションの難しさを代弁したのちに退場です。(笑)

実際、ごくごく一般的な男性の視点から見ると女性ファッションは一種の専門性を帯びた特殊な世界に見えてしまいます。しかし、よくよく考えてみれば素敵な洋服を着こなす一般人女性にとっても難しさは変わらないのではないかと思います。

こういうのは興味があったり、必要があったりすることに対して無意識の内に知識を身に付けていくものなんでしょうね。それはある一定の難しさがあることならファッションに限らず同じことが言えます。

ファッション強者の環が、兄の祐介に対して男性ファッションについては教えられても女性ファッションに対しては難しいと感じているところからも、その奥深さが伺えますね。

3つのシルエット

女性ファッションにはオシャレに見えやすいシルエットが3つあるそうです。

最初に種類だけ言及すると、Aライン、Yライン、Iラインということになるのですが、文字の形の通りに下に広がっているのがAラインで、上に広がっているのがYライン、そして細めな印象なのがIラインとなります。

そして、どんな服装を選ぶとそれぞれどのラインに近付くのかが説明されているのですが興味深いです。

ハイブランド

何か一つはハイブランドをって感じでハイブランドには憧れますよね。そこに男女差はあまり無いと思いますけど、しかし何となく女性の方がハイブランド好きなイメージがあるのは僕の偏見でしょうか?

個人的には、洋服など尖ったデザインが多かったりブランドの主張が強かったりするところがあまり好きではないので、財布のように目立たない小物であればハイブランドを使うこともありますが、そんな感じでハイブランドに対する距離感は人それぞれだとは思うのですが、それはそれとして手の届かないような高額なファッションを眺めてしまうのは人のさがなのかもしれませんね。(笑)

体形とファッション

ファッションを楽しめるのはスタイルが良いから。

そんな風に感じてしまう人がいるのは男女共通なのだなぁと思わされます。

しかし、どちらかといえばむしろ欠点を隠すために使えるのがファッションであるということを本作品は教えてくれています。

痩せて見せたくて細身の洋服を着る人がいるのは男女共通ですが、タイトなものよりあえて広がりのあるものを選ぶのがコツだという点では共通しているのが面白いですね。

それを踏まえて道行く人のファッションを思い出してみると、特に女性のファッションの場合はヒラヒラしていたりフワフワしている洋服が多いので、そういう意味では体形を隠せるようによくできていることが分かります。

カジュアルとドレス

男性ファッションと同じなのは痩せて見せる時のコツだけではありません。

本編でも繰り返し登場するカジュアルとドレスの割合でその場に応じたファッションを選ぶという考え方は、女性ファッションでも同じみたいですね。

女性ファッションの多様性は、そこまでファッションへの興味が大きいわけでもない僕のような男性から見ても羨ましいところですが、しかし一方で面倒くさそうと感じる部分でもあります。

例えば会社員であれば、男性はスーツ一択で服装に困ることなどありませんが、近年はオフィスカジュアルで女性の場合はスーツ姿の人の方が稀ですからね。

仕事中に着る洋服として適切な洋服は何なのか?

それも毎日同じ洋服というわけにもいかない中で考えるのは中々面倒くさそうです。誰も指摘しませんけど、中には「そんな恰好で仕事するの?」と思わず言いたくなるような人もいますからね。

そういう意味では、女性は男性以上にシーンに応じた服装を常日頃から考える必要があるわけで、カジュアルとドレスの割合という基礎知識は日常的に役立つのではないかと思います。

総括

いかがでしたでしょうか?

女性のファッションそのものにはそこまでの興味は無かったものの、単純に漫画作品として面白かったですし、相手の理解のためには男でも女性のファッションについて多少の知識があっても良いのではないかとは思っているので、そういう意味では勉強にもなりました。

ただ、個人的にはこの漫画の購入時にレジに持っていくのが地味に気恥ずかしかったです。(笑)

少女漫画だとか肌色成分多め表紙の漫画だとか、その辺は平気も平気なところではありますけど、やっぱりこの漫画に対して教科書的なイメージを持っているところがあるので、「おまえが買ってどうすんだ」という風に自分でも思ってしまっていたからかもしれません。

例えば、僕は購入したことがありませんが女性ファッション誌を購入しようとしたら似たような気恥ずかしさが生まれそうな気がします。

とはいえ、別に女性だけが楽しめる漫画というわけではなく、男性が読んでも普通に面白いので、是非一度読んでみてはいかがかと思います。

『幽遊白書(7)』短めだけど濃密な名作の感想(ネタバレ注意)

 

幽遊白書』の暗黒武術会編も佳境に差し掛かってまいりましたね。

浦飯Tは幻海の活躍で決勝進出を決めましたし、7巻の序盤にも幻海と戸愚呂弟の因縁の対決が描かれていて、幻海の活躍が著しいです。

戸愚呂弟との戦いには前哨戦という感じも含まれていますが、個人的には暗黒武術会編のバトルカードの中でも上位の名シーンだと思っています。

そして、戸愚呂Tにおける戸愚呂弟以外の実力も明らかになっていきます。

強敵っぽいですが、浦飯幽助も大きくパワーアップして復活したっぽいですし、ラストバトルへの期待が高まっていきますね。

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本作の概要

幻海の活躍もあって決勝進出を決めた浦飯Tですが、戸愚呂弟以外の実力も明らかになってきて戸愚呂Tとの決勝戦はどのカードも苦戦が予想されます。

そんな中、決勝進出の立役者である幻海と戸愚呂弟の因縁の対決が場外で始まり、すべてを浦飯幽助に託した幻海はここで力を使い果たして、しかしそれでもなお戸愚呂弟には届きませんでした。

そして、幻海を失った浦飯幽助は戸愚呂弟との戦いに闘志を燃やします。

本作の見所

幻海VS戸愚呂弟

暗黒武術会の外で行われる野良試合ですが、暗黒武術会編で指折りの見所のひとつだと思うのが幻海と戸愚呂弟の因縁の対決ですね。

正直なところ、乱童編の時点では幻海がラスボス級のキャラクターである戸愚呂弟との因縁のあるこんなに深掘りされるキャラクターになるとは思わなかったというか、わりと驚きの展開だったのではないかと思います。

そして、この対決はそんな因縁に決着を付けるものですが、浦飯幽助の師匠として圧倒的な強者感があり、実際に暗黒武術会の中でその実力を示してきた幻海が、浦飯幽助に力を継承した後とはいえ80%状態の戸愚呂弟の相手にもならない展開は、その後の浦飯Tと戸愚呂Tの試合の行方に不安を感じさせます。

幻海に勝つためには技を超えた圧倒的なパワーが必要なのだと戸愚呂弟は言及していますが、まさにその言葉通りにパワーで幻海を圧倒します。

「お前は幻海じゃない。骨と皮のただのガラクタだ」

「あたしは幻海だ。お前なんかに殺されてたまるか」

戦っているさなかのこのやり取りが非常に印象的です。

長きに渡って強力な力を維持することに拘って人間から妖怪にまでなった戸愚呂弟と、自然に従って年老いていくべきであると考える幻海の価値観の違いを如実に示していますね。

つまり、戸愚呂弟からしてみたら若くて強かった頃の幻海こそが本物の幻海であり、現在の浦飯幽助に力を継承して弱くなった幻海は幻海ではないと否定しているわけで、それこそが戸愚呂弟の価値観だということです。

こういう主張のぶつかり合う戦いでは、より正しいと感じられる主張を持つ方が勝利するのがありがちな展開という気もしますが、この対決の結末はその逆の結果となりました。まあ逆と感じるか否かは読み手の捉え方次第ですが、多くの人は幻海側の主張に正しさを覚えたのではないかと思います。

そして、こういう正しさを持つ主張があっけなく敗れていくのは読んでいて何だか切ないですよね。

幽遊白書』はバトル系少年漫画ですが、意外と切ないとか哀しいと感じられるシーンは多いのも特徴だと思います。

まあ、戸愚呂弟の主張にもあまりにも突き詰めている愚直さがあって、それこそが強さという風にも感じられたような気もします。

蔵馬VS鴉

裏御伽チームの鈴木からもらった前世の実を武器に再び妖狐の姿に戻って戦う蔵馬が見所となります。

そもそも、今ではそこまで珍しいわけでもありませんが、当時のバトル系少年漫画のキャラクターとして蔵馬はかなり珍しい部類のキャラクターだったような気がします。

中世的で古典的な少女漫画にでも登場しそうな出で立ちがまず珍しかったですよね。そんなキャラクターがスタイリッシュではあるものの攻撃的な要素を踏まえた妖狐に変身して戦うというのには、単純に格好良いというだけではなく一種の高揚感がありました。

裏浦島との戦闘では、妖狐になった蔵馬の凄さを強調するためもあったのでしょうけど一瞬で決着が付いてしまったので消化不良感もありましたし、そういう意味では鴉との戦闘を楽しみにしていた人も多かったのではないかと思われます。

そして、そんな妖狐になった蔵馬の珍しいバトルシーンを遺憾なく楽しむことができるのですが、何より面白いのは決着のシーンでは元の蔵馬に戻ってしまっているところ。

妖狐になって鴉をそのまま圧倒していくというのでもそれはそれで面白くはあったと思いますが、妖狐の強さは見せつつ、蔵馬に戻すことでピンチを演出し、その上で勝負に勝って試合に負けるようなギリギリで決着するというのが憎いですよね。

飛影VS武威

飛影にとっての暗黒武術会といえば、黒龍派を完成させるための過程であったという印象が強いですよね。

そして、どうやら戸愚呂Tとの決勝戦までに黒龍派の後遺症を直すに留まらず完成すらさせてきたところはさすがといった感じです。

武威もまた凄い実力者であることは事前に示されていましたが、苦戦すらせずに圧倒的に飛影が勝利してしまいました。もっと苦戦する展開を予想した人が多いのではないかと思いますが、飛影ってそういう感じのキャラだよねって思わされてしまうところが興味深いです。

ちなみに、僕はそうだったのですが、この飛影と武威の試合シーンを読んで飛影であれば戸愚呂弟とも良い勝負をしそうだと思った人は多いのではないでしょうか?

桑原VS戸愚呂兄

浦飯Tと戸愚呂Tとの対決カードについて、ここまでくれば戸愚呂兄と戦うのが桑原になるであろうことは想像に難くないところだと思いますが、桑原が戸愚呂兄に勝利するイメージが個人的には最初湧きませんでした。

実際、試合展開は終始桑原が圧倒され続けるといった感じです・・というか、暗黒武術会編に限らず桑原の戦闘シーンってあまり最初から相手を圧倒するような展開ってほとんど無くて、炊いては最初からピンチって感じですよね。(笑)

しかし、そう来るかと思わされるような驚きの逆転勝ちを収めることが多く、今回もそれと同じような展開になりました。

多少のダメージを与えても回復してしまう戸愚呂兄に、復活でき内容の霊剣を鉄板のような形にして全体を潰してしまうという勝利は、あまりスマートには見えないものの桑原らしさがあって良かったと思います。

総括

いかがでしたでしょうか?

そういえば、浦飯、桑原、蔵馬、飛影の4人が揃って出場するのは一回戦以来ですね。そう考えると、覆面選手こと幻海が不在なのが悔やまれます。いや、一応コエンマが代わりにいますけど。(笑)

ともあれ、次の8巻はいよいよクライマックス。浦飯幽助と戸愚呂弟の試合が開始されます。

恐らく『幽遊白書』のバトルシーンの中では最長となる浦飯幽助と戸愚呂弟の試合が楽しみですね!

『ガンバ!Fly high(11)』今までのライバルがチームメイトになる熱い展開(ネタバレ含む感想)

 

ガンバ!Fly highの文庫版。一冊の中で藤巻駿以外の平成学園の男子体操部員の活躍が一切描かれていないというのは初めてかもしれませんね。

それもそのはず。前巻まででアジア大会の出場を賭けた選考会をお互い敵同士で戦っていたわけで、そこを勝ち上がったのは藤巻駿だけなのだから当然といえば当然の展開ですが、三バカ達が活躍しないガンバ!Fly highは何だか寂しく感じられます。

とはいえ、もちろん寂しいだけではありません。

李軍団の嵯峨康則に、他人の視界を共有する堀田辰也、同じコーチを持つ斉藤栄といった今までは平成学園のライバルだった選手たちが今度はチームメイトになる熱い展開です。

考えてみれば日本代表になるということは、そのチームメイトは国内におけるライバルということにもなるので当然のことなのでしょうけど、ライバルだったからこそ徐々に生じてくる一体感に説得力があるのが素晴らしいです。

それは例えば平成学園の体操を否定する立場にあった李軍団の嵯峨康則すらも例外ではありません。考えてみれば、嵯峨康則はもとより李軍団の中にあっても平成学園の体操を最初から良くも悪くも意識しているところのあるキャラクターだったので、ここでチームメイトになってもそこまで違和感がないのが興味深いところだと思います。

そして、そんなかつての強敵たちが仲間になるのは心強くなるものの、だからこそガンバ!Fly highの読者としての視点からはドリームチームに見える日本チームがアジア大会で苦戦を強いられる展開は、世界の壁の厚さを感じさせられる面白い展開であると感じました。

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本作の概要

全日本合宿で登場した日本チームのコーチ山田三郎は、ヤクザのような容貌でありながら藤巻駿が最も得意とする鉄棒での弱点を一目で見抜く実力者でした。

そして、代表になるために藤巻駿はその弱点を何とか克服します。

レギュラーにこそなれなかったものの鉄棒のスペシャリストとしてアジア大会に出場することになった藤巻駿でしたが、スペシャリストとして出場するからこそ自分の鉄棒が世界に通用するのかと珍しくプレッシャーに悩まされてしまいます。

本作の見所

トラウマの三回宙

「欠点てのは、最も得意とするものの影にひそんでいるものよ!」

全日本の合宿に現れたのはヤクザのような容貌の山田三郎コーチ。あまり体操をしそうには見えない感じで一見その実力は未知数ですが、天才と呼ばれる堀田の弱点が得意種目であるあん馬への過信にあると一目で見抜いてします。

そして、弱点を見抜かれたのは堀田だけではありません。

「びびってんじゃねぇ・・。バーの間近で三回宙をやるのが、そんなにおっかねぇか!?」

鉄棒のスペシャリストである藤巻駿もまた、最も得意とするものの中に弱点がひそんでいたようです。

www.aruiha.com

文庫版の3巻にて、同じ合宿施設で藤巻駿が三回宙の練習で天井を突き破ってしまうエピソードがありました。その後、一時期トラウマで鉄棒から手が離せない事態に陥ってしまったもののアンドレアノフのアドバイスで克服したかに見えました。

しかし、確かにアンドレアノフのアドバイスはトラウマに対して真正面から克服するようなものではなかったので、実際のところ完全な克服には至っていなかったようです。

というか、堀田も指摘している通り藤巻駿の演技構成には三回宙のようにバーの近くで高く飛ぶ必要のある技は含まれていなかったわけで、そういう意味では藤巻駿自身も無意識にそのことに気付いていた可能性すらありますよね。

そして、この全日本の合宿はそんな藤巻駿の鉄棒における弱点を取り除くためのエピソードとなります。

また、最終巻で藤巻駿が決めることになる大技への布石ともなるエピソードなので、最後まで覚えておいて欲しいエピソードでもあります。

プレッシャーを感じる藤巻駿

体操のようにどんな一流選手でもちょっとした不調やミスで大幅に減点されてしまいかねない競技において、藤巻駿のようにあまりプレッシャーは感じないのだという選手は稀なのではないかと思います。

実際、藤巻駿がプレッシャーを感じているようなシーンはとても珍しい。

プレッシャーを感じているシーンといえば、平成学園の男子体操部に入部した直後に試合に出場したシーンと、相楽まり子のために勝ちにこだわりすぎて臨んだ福井での全国大会くらいでしょうか?

しかし、鉄棒のスペシャリストとしてレギュラーの交代要員という立場になった後に、自らの演技をコピーしてみせた楊修平の鉄棒の演技を見て、果たして自分は鉄棒のスペシャリストとして活躍できるのかとプレッシャーを感じるようになります。

表面上はいつもの藤巻駿を取り繕っているものの、明らかにソワソワしている様子が興味深いところです。

「だから勝ち負けのために、体操はしないで! 人を感動させる演技をして! 「楽しい体操」をして!!」

そして、そんな藤巻駿のプレッシャーを和らげたのは相楽まり子でした。

今までの藤巻駿は、勝つための練習はしていても勝つことを絶対的に求められていたかといえばそうではありませんでした。だからこそプレシャーを感じずにいられたのだと思いますが、今回ばかりは勝つことを求められていることを自覚したためプレッシャーを感じたのだと思います。

しかし、相楽まり子が求めたのは勝つための体操ではなく今まで通りの体操でした。

だからこそ藤巻駿のプレッシャーはほぐれたのだと思いますが、考えてみれば面白いやり取りだったと思います。

 

ギスギスした日本チーム

ライバル同士がチームになった日本チームですが、全日本合宿のエピソードでは藤巻駿の三回宙成功を巡って結束力は強まった感じがします。

しかし、藤巻駿というか平成学園の体操を認めたくない日本体操協会の役員である上総の存在と、アジア大会予選での斎藤のあん馬における落下の失敗とそこから続く負の連鎖による日本チームの不調で、日本チーム全体の雰囲気はギスギスとしたものになってしまいます。

なんとも幸先のよくないスタートを切った日本チームのアジア大会ですが、だからこそそこからどう持ち直していくのかが楽しみな展開であるとも言えます。

チームの半数がかつての藤巻駿の強敵たちというドリームチームですが、だからと言って最初から無双したり敵は中国だけという状態になってしまうよりは、こんな実力者でもちょっとしたことでままならなくなるという中でどう実力を発揮していくのかという展開の方が面白いですもんね。

個人的には、高い実力を持つものの完璧を目指すあまり演技時代の迫力は欠けるイメージのある李軍団の嵯峨が、怪我でリタイアした簑山に大口をたたいた自分が負けるわけにはいかないと気迫の演技を見せ、自己採点以上の得点を出してチームの雰囲気まで変えてしまったシーンが印象的でした。

そういう意味でこのアジア大会のエピソードは、平成学園以外のかつてのライバルたちの成長も描かれていて、それもまた面白いところだと思います。

中国チームと王景陽

体操が強い国といえばどこでしょう?

アジアの中であれば中国・・というか、世界的に見ても中国の体操が強いことは周知の事実でしょう。

そして、今回はアジア大会なので当然中国の代表チームも出場しています。

軽薄そうに見えて行きずりでスーツ姿で行った鉄棒で藤巻駿の演技をオリジナル技を含めてコピーしてしまった楊修平に、日本チームを歯牙にもかけない様子の王景陽。

そんな中国の二人の実力者にスポットが当てられて描かれていますが、特に王景陽は日本チームにとっての高い壁として描かれています。

誰に対しても厳しいけど、何より自分に対して厳しいので、その厳しさに強い説得力のある凄い選手として描かれており、直接対決はこのアジア大会のエピソード以外だと最後のシドニーオリンピックのエピソードのみとなるのですが、つまりはガンバ!Fly highという作品における最終的なライバルとなるキャラクターであることを意味するため、その言動には注目してみて読んで欲しいところです。

総括

いかがでしたでしょうか?

鉄棒のみのスペシャリスト枠だった藤巻駿も全種目戦うことになりました。散々な結果だった予選を引きずらずにどこまで本線を戦えるのか?

また、日本チームに立ちはだかる壁として登場した中国チームに王景陽や楊修平といった有力選手の動向も気になるところですね。

『幽遊白書(6)』短めだけど濃密な名作の感想(ネタバレ注意)

 

幽遊白書』の文庫版は表紙が格好良いですよね。背景以外はカラーですらないのに、敵も味方も一言映える絵って感じがします。

6巻目の表紙は戸愚呂弟でとても格好良いですが、しかし戸愚呂Tとの戦闘はまだ先です。(笑)

ついに明らかになる覆面選手の正体。浦飯幽助の不在に伴いそんな覆面選手の活躍が増えている所。最初に黒龍波をかまして以降は何かとハブられ気味だった飛影の復活。それにまさかの妖狐の姿に戻った蔵馬。

などなど、浦飯幽助以外の主要キャラの活躍が目立つ内容になっていますね。

えっ、桑原はどうしたのかって?

彼もしっかりと活躍を見せています。格好良い姿とシリアスな中にある笑いの両方を見せてくれています。(笑)

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本作の概要

桑原の活躍もあり魔性使いチームとの試合に勝利した浦飯Tはついに準決勝に進出します・・が、覆面選手から浦飯幽助の呼び出しがあります。

そこで覆面選手の正体が幻海であることと、一度外れた覆面の下にいた若い女性も同一人物であったことが明らかになります。

また、準決勝では浦飯幽助が不在の中で他のメンバーの活躍が描かれています。

本作の見所

桑原の活躍

悪運が強かったり、精神的なところで戦闘力が大きく上下したり、『幽遊白書』の中では珍しくシリアスな中にもギャグっぽい戦い方を見せるキャラクターの桑原ですが、魔性使いチームとの試合でもやってくれました。

浦飯幽助と陣のバトル好き同士って感じの試合の後に、間違ってはいないけど格好悪い勝利を選ぼうとする吏将と満身創痍の桑原の試合が始まるのですが、あとのことは浦飯幽助たちに託すような意味深な言葉を残しつつ最後の力を振絞るかのような戦いを桑原は強いられます。

しかし、雪菜の登場で雪菜に気付いた桑原が吏将にカウンターの一撃。満身創痍だったはずなのに、そして吏将は一応強敵ということだったはずなのに、いとも簡単に勝利してしまいます。

こういうギャグっぽい戦いも、数多くの戦いの中のひとつとして描ける武術会という舞台だからこそかもしれませんが、桑原らしいような気もしても面白かったと思います。

それが浦飯Tが準決勝に進めるか否かという物語的にも重要な局面だったというのがまた面白いですよね。

飛影の活躍

準決勝の裏御伽Tとの対戦は見所が多いですよね。1回戦で黒龍波を放って以降出番の無かった飛影の久しぶりの試合も見所のひとつです。

今回の魔金太郎との戦いもそうですが、本当はピンチだったとしても飛影は何故かいつも余裕ぶっているのでピンチに見えない所が面白いところですよね。

飛影の繰り出す技に併せて進化していく魔金太郎。

飛影が万全ではないとはいえ、相手の特性が必ず相手を上回っていくようなものである限りかなりのピンチなのだと思うのですが、飛影曰くかなりイメージの悪い妖気の剣でかなり余裕のありそうな勝利をもぎ取ります。

妖気の剣といえば霊気の剣を使う桑原を思い出しますが、それをイメージが悪いと使うのを躊躇う飛影がちょっと面白かったですね。

なんというか、意外と桑原のことを意識しているというかなんというか、少なくとも無関心ではないのだということが窺えます。

蔵馬の活躍

蔵馬も相当な実力者で、飛影と同じくピンチでも余裕な態度は崩さないタイプのキャラクターです・・が、考えてみれば意外といつもピンチな状況に陥っていますよね。(笑)

どちらかといえば二枚目な感じで女性人気の高そうなキャラクターですけど、実は男らしいところもあってバトル漫画のキャラクターとして普通に格好良いと思っていて、個人的にはかなり好きなキャラクターだったりします。

なかでも裏御伽Tの裏浦島との試合は、暗黒武術会編の試合の中でもかなり強烈に印象に残っています。

裏浦島の策略でどんどん若返っていって、赤ん坊以前、つまりは妖狐である前世の姿にまで戻ってしまった蔵馬。

変身ヒーローもののような圧倒的な強キャラになってしまったような感じで妖狐になった蔵馬が超絶格好良いと感じたのを覚えています。

こういうバトル漫画のメイン級キャラクターで、圧倒的に強キャラ感を出すキャラクターは珍しくありませんが、妖狐になった蔵馬のような大物感のあるキャラクターは意外と珍しいような気がします。

幽遊白書』の他のシーンを読んでいる時とは違った感情が揺さぶられるような気がして、なかなか興味深い見所だと思います。

幻海の活躍

乱童編で初登場した際にはここまで重要人物になるとは思っていなかった幻海ですが、暗黒武術会編では、戸愚呂兄弟の古い知人として、そして浦飯幽助の師匠としてかなり重要な役どころを担っていますよね。

6巻でいうと、最後の試練を浦飯幽助に与える際の掛け合いが個人的にはとても好きです。

いつも通りからかい半分の性悪なやり取りを見せつつも浦飯幽助を信頼している様子の幻海と、喧嘩っ早いわりに意外と情の深い浦飯幽助の二人が、いわゆるバトル漫画におけるパワーアップのシーンであるはずなのに何故だかしんみりしてしまうのが不思議です。

もっとこう派手にバーンとパワーアップみたいなのも嫌いではありませんが、こういうのも良いと感じさせられます。

そして、浦飯幽助に自らの力を継承させ弱体化した幻海はそのまま裏御伽Tとの試合に合流し、死々若丸と対戦するのですが、弱体化してなお老獪な強さを見せるところがとても格好良いです。

総括

いかがでしたでしょうか?

僕がこの6巻辺りのエピソードに触れたのはアニメ版の方が先でしたが、幻海の連戦シーンでは幻海のことをとても格好良いと思いましたし、何より妖狐化した蔵馬にワクワクした記憶があります。

そんな見所の多かった6巻ですが、次の7巻はいよいよ戸愚呂Tとの試合開始ですね!

戸愚呂弟が圧倒的な以外は未知数な戸愚呂Tのメンバーの実力も明らかになっていきます。

『冠さんの時計工房(2)』時計の世界が楽しい漫画の感想(ネタバレ注意)

 

好きなものを仕事にすることに否定的な意見が何故か多いことに対して一定の納得感はありますが、冠さんの時計工房を読んでいると全くそんなことはないのだという気持ちになってしまいます。

好きなことだからこそ仕事にはしたくない。

そんな気持ちも分からなくはないですが、やっぱり仕事をしている時に輝いて見えるのは好きな仕事をしている人である気がしますよね。

だから、好きなことを仕事にしたくないというのは、好きな仕事でもなんでもない成り行きで従事することになった仕事に日々勤しむ僕のような大多数の人間によるヒガミのようなものなのかもしれません。

本作品の主人公である冠綾子は相変わらず働く姿もプライベートな姿もキラキラと輝いて見える女性で、魅力的に見える以上に羨ましいとすら感じてしまいます。

ほのぼの日常系の漫画ではありますが、読んでいて日頃のストレスが緩和されるような気持ちになれる良作です。

また、時計に関する豆知識が手に入るのも面白いところです。

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本作の概要

防水機能のある時計、思い出のある時計、時間に正確な人と鉄道時計、今巻も様々な時計とそれに関わる冠綾子が描かれています。

また、初めての自分の時計を選ぶ冠綾子の過去エピソードも、ちょっと子供っぽいところの残った冠綾子が垣間見えて面白いです。

本作の見所

防水機能について

なんとなくダイバーが使うような時計の防水機能と普通の防水機能は違うのだろうと漠然と思ったりはしていましたが、子供と川遊びに行くというお客さんに冠綾子がとても分かりやすく時計の防水機能について説明していました。

手を洗った時に水が掛かる程度のことを想定した日常生活防水。

水遊びや水上スポーツに水仕事のことを想定した日常生活強化防水。

空気ボンベを使用した潜水に耐えられる空気潜水用防水。

更に深い潜水である飽和潜水に耐えられる飽和潜水用防水。

・・と、一口に防水と言っても色々種類があるようです。個人的なイメージですが、用途など考えずに必要以上の防水機能に得意になっているような人も結構いそうな気がします。また、防水だからと想定された以上の用途に使ってしまう人もいそうですよね。

時計における一般的な機能のわりには詳しく知らなさそうな人が多い防水ですが、楽しみながら勉強になるところが良いと思います。

また、潜水機能のあるダイバーズウォッチのように特別な機能のある時計には、ずっと使っていても用途が不明な機能があったりするものですが、ダイバーズウォッチの周りのギザギザが何なのかについても説明されていて、まあ潜水時間を図るための機能なのですが安全のために反時計回りにしか回転しないようになっていたり、細やかな工夫がなされているのも興味深いです。

そういえば、1巻でも時計の中に水滴が付いてしまうエピソードがありましたが、日常的に使用する時計と防水というのは思っている以上に関連深いテーマなのかもしれませんね。

あと、本エピソードでは水着姿で警戒に泳いだり、水着姿を凝視されて恥ずかしがるという普段とは違った冠綾子が見られるのも見所となります。(笑)

時計の思い出

老夫婦のお客さんから預かった時計が入っている鞄は何なのか?

そう問われた時の冠綾子の「二人の思い出です」という回答が素敵ですよね。

腕時計や懐中時計のように日常的に身に付ける時計は、その一つ一つが長く使うもので思い出深くもなってくるものなので、言い得て妙な回答だと思います。

僕も今までの人生で4つの腕時計と1つの懐中時計を使っていますが、考えてみればそれを買った時のこととか、使わなくなった時計の処分を躊躇ったことを覚えています。確かに思い出深いものだったと。

鉄道時計

現代における懐中時計といえば、便利さ以上に何だかオシャレなイメージが強いのですけど、作中で言及されている通り昔の鉄道時計ってあまりオシャレな感じでもありませんよね。僕の祖父も鉄道関係者で所持品の中に懐中時計があった記憶があるのですが、作中で紹介されているような大きな文字盤の懐中時計だった記憶があります。

そして、なんでそんなデザインなのかとか、懐中時計という割にはサイズが大きいだとか、その理由を考えたことなんてありませんでしたが、本作中でその理由や時間を重視するに至った経緯・歴史が語られていてちょっぴり勉強になったような気がしました。

総括

いかがでしたでしょうか?

相変わらず素敵な漫画ですよね。

鉄道時計の話など、1巻よりも時計そのものの知識が語られることが多かったような印象がありますが、それを語らせるためのエピソードの完成度がとても高いように感じられました。

時計の知識の話も面白いので、こういうエピソードが今後増えたりするともっと面白くなりそうですよね。

次巻も楽しみな漫画作品です。

『幽遊白書(5)』短めだけど濃密な名作の感想(ネタバレ注意)

 

いよいよ暗黒武術会が開幕した『幽遊白書』の5巻目となります。

こういったバトル漫画におけるトーナメントのエピソードでは、最初は順当にお祭り騒ぎの雰囲気で始まったところから徐々に不穏な事件に繋がっていくような流れが多い気がしますが、暗黒武術会の場合はトーナメントの形式は最後まで保たれていているものの、各戦闘の雰囲気も様々だったりしてメリハリのある感じになっています。

読んでいて気持ちが良いと感じさせられる対戦相手との戦闘もあれば、胸糞悪くなってしまうような酷い相手との戦闘もあります。

そして、そんな違いが同じチームのメンバーの中ですら発生しているのが面白いところで、つまりは相当な人数が存在する対戦相手の一人一人が個性的で良くも悪くも魅力的なキャラクターとして描かれています。

トーナメントを勝ち進むにつれ、少しずつ何かしらのトラブルが発生していくのも読んでいて飽きさせませんね。

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本作の概要

VS六遊怪Tの結果は浦飯幽助と酎との試合に委ねられ、結果は浦飯幽助の辛勝となりました。1回戦から波乱が起きた浦飯Tでしたが、相手チームや大会運営の陰謀で2回戦、3回戦と選手を欠いた状態で挑んでいくことになります。

また、今巻には蔵馬と飛影の出会いを描いた短編も収録されています。

本作の見所

DrイチガキT

暗黒武術会は招待された浦飯Tは例外として基本的に妖怪が出場する大会なのだと思っていましたが、考えてみれば例外が許されている以上他にも人間が出場しているチームが存在してもおかしくないですよね。

そういうわけでDrイチガキTは、2チーム目の登場にしていきなり人間の霊能力者が登場します。

幽遊白書』におけるバトルといえば相手はほとんど妖怪だというイメージが強いですが、後に登場する仙水忍というラスボス級に乱童編でのトーナメント、それにこのDrイチガキTとの対戦と意外に霊能力者とのバトルも多いような気がします。

そして、1回戦の六遊怪Tとの対戦では比較的純粋な武術会らしい武術会の対戦というイメージだったのに対して、2回戦のDrイチガキTの陰謀渦巻く感じが興味深いですね。

リーダーのDrイチガキ自身はリーダーかつブレインというような役どころで、蔵馬と飛影が出場できないように刺客を差し向けたり、そもそもチームメンバの霊能力者3人も望まない戦いを強いられていたり、分かりやすい悪党という感じです。

しかし、頭は回るようで状況の変化に応じた勝率をシミュレーションしているのですが、徐々の浦飯Tの勝率が高まっていくことに焦りを感じていく様子が面白いです。

また、この対戦の中で覆面選手の覆面が外れる点も興味深いところ。

幻海かと思われた覆面選手の中身は若い女性で、浦飯や桑原が苦戦していた霊能力者3人にアッサリとトドメを刺す実力も明らかになります。

この覆面選手の正体についてはもう少し後の続巻で明らかになるので、知らない人はその辺にも注目ですね。

魔性使いT

DrイチガキTとの試合では対戦相手の陰謀によって蔵馬と飛影を欠いた状態で苦戦を強いられることになりましたが、今度は大会運営側の陰謀で覆面選手と飛影を欠いた状態で戦うことになります。

飛影は連続での欠場ですが、初戦のダメージが残っているので作者的にも試合させて活躍させ辛かったのではないかとメタいことも考えてしまいます。(笑)

そんなわけで魔性使いTとの試合では三連戦した蔵馬の活躍が目立ちました。

メインキャラの中ではバトルシーンの少ない印象の蔵馬の珍しい活躍シーンとなります。

漫画的な演出もあるのだと思いますが、蔵馬の戦う相手の中にはトリッキーだったり、相手を侮らない冷静さがあったり、理知的なところのある相手が多いような気がしますが、三戦目で既に戦闘不能状態の蔵馬をボコった爆拳のような脳筋タイプの相手もたまにいます。

しかし、どちらの対戦相手の場合でも蔵馬の良さを引き立てているような気がして、そのあたりが興味深いところですよね。

総括

いかがでしたでしょうか?

暗黒武術会編の良いところは、相当数いるにも関わらずとにかく対戦相手が個性的で魅力的な所だと思います。

この独特なキャラクターの個性は作者の冨樫義博先生の特徴のひとつで、後の作品となる『HUNTER×HUNTER』ではより一層磨きが掛かっていますが、そんな特徴が顕著に表れ始めたエピソードなのではないかとも思います。

次にどんなキャラクターが登場するのか、そしてどんな戦いを見せるのか、誰もが個性的でどんな戦闘シーンだったのかも記憶に残る印象的なものだったので、最初は常に次の展開にワクワクしていた覚えがあります。

というわけで5巻は暗黒武術会の前半戦という感じでしたが、中盤以降となる6巻以降も楽しみですね!

『子供はわかってあげない』ゆるゆる日常系ミステリーの感想(ネタバレ注意)

 

子供はわかってあげないはもう5年以上前の漫画ですが、最近読んだ同作者の『水は海に向かって流れる』があまりにも刺さったので、同作者の過去作品も読んでみたいと思い読んでみたわけです。

『水は海に向かって流れる』は、漫画作品にしてはそれほど大きな事件が起きるわけでもキャラクターが個性的なわけでもないのに、ストーリーにはいつの間にか引き込まれキャラクターも魅力的に感じられる自然な作品でした。

そんな漫画を期待して子供はわかってあげないも読んでみたわけなのですけど、なるほどこの理由の説明は難しいけど引き込まれる感じが田島列島先生という漫画家の持ち味なのだと改めて思わされました。

ちょっとした日常系で、ちょっとしたミステリーで、ちょっとしたSF要素もあって、ちょっとした青春ラブコメで、そんなごった煮のような感じの漫画なのですけど、キャラクターの言動がリアルで引き込まれてしまいます。

『水は海に向かって流れる』と同じく、その良さの説明が難しい作品ではあって、普段であればこうしてレビュー記事を記すのを躊躇うようなタイプの作品なのですが、凄く良かったのでこうして記してみています。

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本作の概要

タルンドル朔田と称される水泳部員朔田美波が本作品の主人公で、2年生で唯一大会に出場するほどの実力派スポーツ少女ではあるけどアニメオタクでもあります。

美波はある日『魔法左官少女バッファローKOTEKO』という好きなアニメをキッカケに書道部員の門司昭平と知り合いますが、その兄で探偵(という名の便利屋)の明大に実の父親捜しを依頼することになります。

なんというか、不思議な縁が描かれた作品なのではないかと思います。

ところで、公式には本作品のことを明大「水泳×書道×アニオタ×新興宗教×超能力×父探し×夏休み=青春(?)」と紹介されています。

というわけで、本記事ではこの要素ごとにレビューしていってみるのが面白いかと思ったので、そうしていきたいと思います。

本作の見所

水泳×書道×アニオタ

さて、最小の水泳×書道×アニオタが何を指し示しているのかと言えば、子供はわかってあげないの主要登場人物を指し示しています。

水泳は主人公の朔田美波。タルンドル朔田と称されるのに妙な納得感があるけど実力はピカイチの水泳部員で、人懐っこくはあるけどサバサバした性格という感じの女子高生ですね。

書道は、そんな美波がとあるキッカケで知り合うことになる書道部員の門司昭平。祖父の経営する書道教室で小学生に教える腕前の男子高校生です。

そしてアニオタはそんな美波と昭平の二人に共通した要素で、『魔法左官少女バッファローKOTEKO』というアニメの絵を学校の屋上で昭平が描いているのを美波が見つけたのが繋がりができるキッカケとなりました。

水泳部員と書道部員で別のクラス。接点のない二人の接点のある要素の掛け合わせと考えると中々興味深い数式です。

また、昭平の兄である性転換して女性になった探偵の明大もかなりの主要人物ですが、その要素まで加えると「女装×探偵」まで加わって更にごった煮感が出てきて面白かったかもしれませんね。(笑)

新興宗教×超能力×父探し

本作品の構成要素の中で最も「?」となる部分ですね。(笑)

新興宗教、超能力、父探し、ひとつひとつの要素はまあありがちなテーマではありますがこれらが掛け合わされることが果たしてあるのか。ましてや登場人物は水泳、書道、アニオタですからね。

まあ、簡単なあらすじだけ記しておくと、朔田美波の実の父親(両親は離婚済みで義理の父がいる)が対面した相手の心を読む超能力者で、新興宗教の教祖に祭り上げられているような人物・・だったのですが、教団のお金を盗んだ疑いと共に行方を眩ませてしまっていました。そんな実の父親捜しを探偵である門司昭平の兄明大に依頼します。

それが子供はわかってあげないのストーリーの骨子となるわけですが、ごった煮感がある割には意外とスッキリしていますよね。

ですが、そんなストーリーの中で織りなされるキャラクターの掛け合いが楽しかったり、切れ味のあるセリフが魅力だったりして読んでいて全く飽きません。

個人的には、朔田美波と門司昭平のほんの少しずつ変化していく関係性がリアリティがあって面白いともいます。

夏休み=青春(?)

キャラクターとストーリーの骨子、様々な要素がある作品ですが結局のところひと夏が作り上げたラブストーリーということになるのだと思います。

朔田美波と門司昭平の関係性は最初、好きなアニメが同じという趣味友達でしかありませんでした。その後、朔田美波の父親捜しというエピソードに突入していきますが、門司昭平は探偵である兄を紹介しただけでしばらくはストーリーの骨子の部分へは関わっていきません。

それが実の父親のところから戻ってこない朔田美波を迎えにいった時から二人の距離感に明らかに違いが出てきます。

この変化はかなり急激にも見えるのですが、それ以前にも若干の感情の変化が少しずつ描かれていたので違和感は全くなく、ああこの作品はラブストーリーでもあったのだと気付かされました。

なんというか、相手を好きになるというよりは徐々に意識していくという描き方がリアルに感じられて、最後にそれを確認する朔田美波の告白シーンは、今まで読んだ漫画のどの告白シーンよりもグッと刺さりました。

そして、ここが子供はわかってあげないという作品のハイライトであり、最大の見所であるということを考えてみれば、上巻だけ読んでもその良さの半分までしか伝わらないため、上下巻を通して読んでみるのをオススメします。

総括

いかがでしたでしょうか?

僕のレビューで子供はわかってあげないという作品の良さがどれほど伝わるかは分かりませんが、これで興味を持つ人がいたら嬉しいです。

正直なところ、何かキッカケが無いと興味を持ちづらい作品ではある気がするんですよね。

表紙が派手なわけではなく、どんな物語なのか予想もできない。絵は段々とクセになってきますけど、お世辞にも上手い方ではない。それでいて明大「水泳×書道×アニオタ×新興宗教×超能力×父探し×夏休み=青春(?)」なんてごった煮感のある紹介がされているものだから、初見ではどうしても手に取りづらいところがあります。

しかし、それでスルーしていてはもったいない作品であることは間違いありません。

たった20話で構成される漫画ですが、それだけによく纏まっていて最初から最後まで面白さは変わりませんし、上下2冊構成というのも普段漫画を読まない人でも手軽に手に取りやすい冊数です。

また、どうやら今年(2020年)には劇場映画化も予定されているようでタイムリーな作品でもあるので、この機会に手に取ってみてはいかがでしょうか?

『幽遊白書(4)』短めだけど濃密な名作の感想(ネタバレ注意)

 

幽遊白書』といえばまず最初に何が思い浮かびますか?

異能バトルものには珍しい剃りの入った主人公でしょうか?

それともレイガンという必殺技でしょうか?

蔵馬や飛影という魅力的な妖怪キャラクターでしょうか?

・・とまあ、人それぞれで思い浮かぶものは違うでしょうし、『幽遊白書』とはそれだけ様々な魅力がある作品なわけです。

それでもあえて何か『幽遊白書』の中で印象的な何かを挙げるとすると、僕は暗黒武術会を挙げたいと思います。

僕が『幽遊白書』という作品に初めて触れたのが、テレビアニメ版の暗黒武術会で浦飯幽助と戸愚呂弟が戦っているシーン。その序盤で浦飯幽助がレイガンを打つタイミングを図っているシーンだったことを何故か鮮明に覚えています。

そんな僕の思い出は横に置いておいたとしても、暗黒武術会編に熱くなったかつての少年は多いのではないでしょうか?

そして、この4巻目ではそんな暗黒武術会がいよいよ始まります。

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本作の概要

四聖獣の朱雀に勝利して霊界探偵として一つの山を越えた浦飯幽助疲労困憊の様子でしたが、そこに間髪入れずに次の指令が発令されます。

人間のブローカーに捕らわれた氷女という妖怪の少女を救出する依頼で、そこでは戸愚呂兄弟との遭遇があり、今後の暗黒武術会編に繋がっていくエピソードとなります。

本作の見所

飛影の妹

浦飯幽助への新たな指令は人間のブローカーに捕らわれた氷女という妖怪の少女を救出すること。そして、その少女こそ飛影の双子の妹の雪菜となります。

といっても雪菜の方はそもそも自分の兄が飛影であることは知らず、それを探すために人間界にやって来た経緯があって、その詳細が語られるのは作品のもっと終盤となります。

飛影の妹と言われて違和感があるほど健気で優しい性格の薄幸の少女といった雰囲気と、飛影の妹に対するツンデレ全開に感じられる言動。

なかなか一言で表現できない兄妹の複雑な関係が読んでいて非常にもどかしく、それがずっと続いていく感じではあるのですが、個人的にはこの感じが嫌いではありません。

戸愚呂兄弟

少年漫画における武術会といえば『ドラゴンボール』の天下一武道会をはじめ、とにかく盛り上がるエピソードのド定番という感じですが、『幽遊白書』という作品においてはそれは暗黒武術会編が該当します。

そんな暗黒武術会編におけるラスボスとなるのが戸愚呂兄弟なのですが、雪菜の休出のエピソードが初登場となります。

救出対象の雪菜といい、妖怪の兄弟というのを作者の冨樫義博先生はこの時描きたかったのかもしれませんね。

ともあれ、まるで海外のアクションスターのようないでたちの戸愚呂弟には言いしれない強キャラ感があって、作品の後半になって実は戸愚呂弟よりもずっと格上の存在がいることが明らかになっていくものの、それでも『幽遊白書』の強敵といえば戸愚呂弟を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?

徐々に真の実力を見せてくるようなタイプの敵キャラも定番ですが、それがパーセンテージで数値化されている点も分かりやすく、たった30%なのにこんなに強いのかと読者を驚かせる効果は抜群でしたね。

常に余裕のある立ち居振る舞い。

垂金のペットであるヘレンちゃんとの戦闘。

そして一応は四聖獣という強敵に勝利した浦飯幽助たちとの戦闘でも圧倒的な強さを見せつけられ、トリッキーな奇襲戦法で何とか勝利したように見えたものの、しかしそれもワザと負けたフリをしていただけという相当な実力差が無ければ難しそうなことをやってのけています。

その後、暗黒武術会への招待を伝えに来た際に浦飯幽助との戦闘時には20%程度の力で戦っていたことが明らかとなります。

強さの演出という意味では、恐らく『幽遊白書』の中では最も演出されたキャラクターだと思いますが、その立ち居振る舞いがとても魅力的なキャラクターだと思います。

暗黒武術会の開幕

幽遊白書』における暗黒武術会編に限らず、こういったトーナメント戦のようなエピソードには他のエピソードとは違った魅力があると思います。

巨大な敵に立ち向かう。

そしてその敵は分かりやすい悪であり敗北は破滅を意味する。

そういったエピソードと違って、例え相手に悪の要素があったり死が関わることがあったとしても、どこまでもお祭りではあるからこその独特な雰囲気とでもいいましょうか。

ぼたんや雪村螢子が観客として観に来ていたり、試合中と試合の合間の両方が描かれることで緊張感のメリハリが生まれ、常に緊張感の高まりを感じることが出来るのも良いところです。

というか、最初に相手を殺したのが味方側のキャラクターである飛影というアウトローな開幕も興味深く、その際に使用した飛影の必殺技となる炎殺黒龍波の登場で一気に盛り上がりもしましたね。

 

総括

いかがでしたでしょうか?

開幕したばかりですけど暗黒武術会編はさっそく盛り上がっていますよね。

体格や使用している技、それに服装的に明らかに幻海っぽくて正体を隠す気の無さそうな覆面選手がどのような役割を果たしていくのかが気になるところですし、飛影の炎殺黒龍波で凄まじい戦いの序章と浦飯Tの実力を演出したかと思えば、蔵馬によってその凄まじさが飛影の右腕を犠牲にした結果であることが語られたことで今後への緊張感を煽っている。

そんな感じで暗黒武術会編の導入部はめちゃめちゃ上手い掴みになっていますよね。

トーナメントという比較的ストーリー展開であるにも関わらず常にワクワクさせてくれる暗黒武術会編の今後が楽しみです。

『水は海に向かって流れる(1)』まるでドラマのような漫画の感想(ネタバレ注意)

 

書店で平積みされているのを見かけ、タイトルからも表紙からも、そして裏表紙に書かれたあらすじからも、どんな漫画なのかが想像できない。しかし、何故か惹かれるものがあって読んでみたのは水は海に向かって流れるという漫画です。

水は海に向かって流れるとは、一体どのような意味なのだろうという疑問も興味を持った理由です。

それで、さて読んでみようと読んでみた率直な感想としては、読んでいる時は作品の世界観の中に急激に引き込まれ、キャラクターの魅力に当てられ、もっと読んでいたいという余韻に浸る結果となり、気付けば2巻目をポチっと購入していました。(笑)

しかし、じゃあ何が良かったのかと問われれば説明が難しい漫画なのです。

ファンタジーやSFのような分かりやすさはありません。

それに恋愛やコメディでもありません。

ある特殊なシチュエーションを題材にはしているものの、既存のジャンルに収まっているような作品ではないような気がします。そういう作品自体は時折見かけますが、作者の独りよがりのように感じられて受け付けられなくなるか、その逆でどっぷりと引き込まれるかのいずれかで、本作品は言うまでもなく後者だったと思います。

そういう意味では好き嫌いが分かれる作品で、人によっては読んでいて退屈だと感じられるようなタイプの作品かもしれません。

しかし、刺さる人には刺さる作品だと思うので本記事で紹介してみたいと思います。

ただ、正直なところ大きな事件が起きるタイプの物語ではないのでいつもみたいに見所紹介するのは難しそうなのですけど、それでも良い作品であることは間違いないので頑張ります!

 

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本作の概要

高校に入ると同時におじさん(母親の弟)の家の部屋に住むことになった主人公の直達を駅に迎えに来たのは、26歳のOLである榊さんでした。

直達は榊さんをおじさんの恋人だと勘違いしますが、おじさんがルームシェアしている同居人の一人だったようです。他にも女装した占い師や榊さんの昔馴染みらしい大学教授が住んでいて中々個性的なルームシェアらしいですが、とにもかくにも直達もそこに加わります。

そして、初対面であるはずの榊さんでしたが、直達とは浅からぬ因縁があることが判明します。

本作の見所

直達から見た榊さん

水は海に向かって流れるの中で特筆する要素は何と言っても榊さんの描かれ方にあるのではないかと思います。

榊さんは一応ヒロインという立ち位置にいるキャラクターなのだと思いますが、しかし正直言ってあまりヒロインっぽくはありません。

最初、直達は榊さんのことを自分のおじさんの恋人で、大人な対応を見せているものの機嫌を悪くしている・・ようにも見えるけど実はそうでもないような女性だと思っていたようです。

直達の視点から描かれているので、榊さんはどことなく不思議でミステリアスな雰囲気の女性であると読んでいて伝わってきました・・が、実際のところ誰にでもあるような多少の個性はあるもののもの凄く普通の女性ですよね。

読み進めれば分かりますが、高校生男子である直達に対しては敬語とタメ口が入り混じったような微妙な距離感で、よく見ると大人ぶっている風であります。

まあ、微妙な距離感なのは榊さんが最初から直達との因縁に気付いていたからというのもあるかもしれませんが。

大人ぶっている風だけど、ビールが好きだったり行動に若干のオヤジっぽさがあるのもある意味では年相応の普通の女性っぽさである気がしますね。

まあ、高校生男子にとっての10歳年上の社会人の女性って教育関係者でもなければ接する機会のない存在であり、なんなら女子大生くらいでも大人に見えるお年頃なわけですから、そもそも近付く機会があったとしたら平均的に見て不思議でミステリアスに見えるものなのかもしれませんね。

・・と、長くなりましたが結局何が言いたかったのかというと、作中かなり個性的に見える榊さんは実のところかなり普通の人だということが言いたかったわけです。

しかし、そこに直達との因縁をはじめとした周囲の人間との関係性が加わってちょっと不思議な感じに見えるところが興味深いです。

バチがあたる

そういえば直達と榊さんの因縁とは何なのかについて言及していませんでしたね。

結論から言うと、直達の父親と榊さんの母親は過去に不倫関係にあって、直達の父親は元さやに収まりましたが榊さんの母親は戻ってこなかった・・という因縁です。

そして、そのことを榊さんは最初から知っていて、直達は知らなかったがふとしたキッカケで知ってしまっている。

それがこの二人の間にある現状ですね。

榊さんはかなり大人の対応をしているつもりで、実際その言動から直達は榊さんの内心が分からずにいる様子が伺えます。

しかし、実際にはメガネの教授が言及している通り、榊さんは直達との因縁を意識しすぎていて、それでどこか不自然になっているところがあるような気がします。

榊さんはどちらかといえばおっとり大人しいタイプの女性に見え、実際その通りであるような気がしますが、直達の父親と再会した際にはお盆をばちーんと投げつけて怪我をさせてしまっています。これはかなり感情的な行動であるはずで、なかなか表には見せなくてもやっぱり榊さんの中におけるこの因縁の比重が大きいことが分かりますね。

この凄く微妙な榊さんの感情の変化がとてもうまく描かれているのも本作品の見所なのではないかと思います。

おじさんと榊さんの喧嘩

さて、直達のおじさんであるニゲミチ先生からしてもこの不倫問題は自分の親戚の問題なわけですが、どうやら二人の因縁の相手同士であることは知らないようです。まあ、自分の姉の旦那の不倫相手の子供なんて大概知らないものでしょう。

まあ、知らないからこそ榊さんお盆でバチーン事件を見て榊さんのことを怒っているわけなのですが、事情を知ってさえいれば榊さんにはよっぼど情状酌量の余地がありますからね。少なくとも、一方的に悪者にする人は少ないでしょう。

しかし、榊さん自身が極力直達との因縁を周知のものにはしたくないと思っていて、しかもどうやらそれが直達を気遣ってのことっぽくて、同じく直達を気遣っているニゲミチ先生と喧嘩しているという状況がやるせないです。

だからメガネの教授さんは榊さんからも直達からも内緒にするように言われていたのに積極的に暴露しに行ったのでしょうけど。

何というか、安穏そうに見えて不穏なところもある物語が本当に興味深いと思います。

総括

いかがでしたでしょうか?

本記事のタイトルに冠したように普段読んでいる漫画というよりは、少し古いドラマにありそうな内容の作品だったのではないかと思います。

W不倫の関係にあった両親の子供たちが偶然再会するという何やらドロドロした設定で、それを知った直達やずっと抱え込んでいた榊さんも内側にドロドロした何かを抱えていたような気もしますが、読んでいて辛くなるとかそういうことは全くなくて、むしろ若干ほのぼのしているような雰囲気すら感じ取れるところが興味深かったです。

実のところ絵柄も単調でキャラクターもそこまで濃いわけではなく、普通であれば印象が薄いと感じてしまうような感じなのですが、何故か魅力的に感じられるのです。

何でなんだろうと考えてみたら、キャラクターの言動がとても自然に感じられるからなのかもしれません。個性は持たせてもそこに不自然さまでは持たせておらず、逆に自然であっても個性までは廃していない。そんな絶妙なバランスで描かれているように感じられました。

それは物語の流れにも言えることで、物語を進展させるために何か特別なイベントを発生されているというよりは、いわゆる「成り行き」に任せているような印象を受けます。だから予想しづらさと驚きはあっても自然な物語になっているのだと思います。

水は海に向かって流れるのタイトルが何を意味しているのかは分かりませんが、個人的には自然に感じられる本作品には合っているタイトルなのではないかと思いました。

『半妖の夜叉姫』犬夜叉のその後がアニメ化するらしい!

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animatetimes.com

 

 2020年の秋に『半妖の夜叉姫』というアニメ作品が放送されるというニュースを目にした時、僕はこのように思いました。

何だか『犬夜叉』を彷彿とさせるタイトルだなぁ・・と。

というか、彷彿とさせるも何もまさしく『犬夜叉』の続編のようなオリジナルアニメになっているようですね。

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スぅ~っっっ!

・・っと、思わず一呼吸置いて冷静になって改めてニュース読み返してしまいました。(笑)

長年に渡って活躍されていて幅広い年代にファンのいる高橋留美子先生ですが、そんな高橋留美子先生の作品の中において『犬夜叉』こそがドンピシャ世代である僕としては、歓喜せずにはいられないニュースだったからです。

近年というかここ数年、古い作品のリメイクや新規のアニメ化が流行になっているような気がします。ゲーム業界なら『FF7リメイク』や、同じアニメであれば『フルーツバスケット』が記憶に新しいですね。

しかし、こうして続編がオリジナルアニメとして制作されるのは珍しいような気がします。あるかもしれませんが、少なくとも僕にはパッと思い浮かびませんでした。

オリジナルアニメとして制作するとなれば、原作ありきの作品より労力がかかりそうなものですが(※勝手なイメージです)、それでも続編的に制作されるということはそれだけ『犬夜叉』という作品が愛されているということなのかもしれませんね。

とはいえ、現時点ではそれほど多くの情報が出ているわけではありませんが、あまりにも楽しみなので本記事では既出の情報や、原作となる『犬夜叉』という作品についてまとめてみました。 

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高橋留美子先生の関りは?

オリジナルアニメとはいえ『犬夜叉』の関連作品なのであれば高橋留美子先生の関わり方が気になるところですよね。

今のところはメインキャラクターデザインとしての関りが言及されていますが、高橋留美子先生自身も「楽しみにしています」とコメントされているようなので、ストーリーに関しては深くかかわっていることはないのではないかと予想されます。

それがどのように作用するかは実際にアニメを見てみるまでわからないとは思いますが、キャラデザに関わられているというだけでも十分期待に値するのではないかと思います。

流石に、現在の高橋留美子先生は週刊少年サンデーで『MAO』を連載中なのでそれほど深く関わることは無いと思われますが、読み切りとかでも良いので後々コミカライズを描かれるみたいなことがあれば嬉しいですよね。

犬夜叉やかごめが登場する?

発表されたばかりですが、『半妖の夜叉姫』のあらすじやメインキャラクター3名は既に公開されています。

そして、その3名の内の1名で犬夜叉とかごめの娘であるもろはは、両親のことをほとんど知らないと紹介されているので、そういう意味では少なくとも最初から犬夜叉やかごめが登場する可能性は低いのではないかと想像されます。

こういう少し時代を経過させた続編ものの作品では、前作の主人公格を神格化したような立ち位置に据えることが珍しくないと思いますが、『半妖の夜叉姫』もそういうタイプの作品なのだと推測されますね。

とはいえ、だからこそここぞというタイミングで犬夜叉やかごめが登場する可能性は高いのではないかと思います。

また、これまたメインキャラクターの1名であるせつなは、琥珀がお頭を務める妖怪退治屋に参加していると紹介されています。琥珀は『犬夜叉』でも重要キャラの一人でしたが、犬夜叉やかごめの登場はもったいぶられたとしても、琥珀を始め『犬夜叉』の登場人物が少なからず登場することは間違いないのではないでしょうか?

 

半妖の夜叉姫とは?

そして、公表されている通りメインキャラクターの3名の内2名は殺生丸の、1名は犬夜叉の娘だそうです。

・・で、気になるのが本作品のタイトルが『半妖の夜叉姫』であり、この3名のキャラクターが同列に主人公格のように紹介されている点です。

犬夜叉とかごめの娘と明確に紹介されているもろははともかくとして、殺生丸の娘として紹介されているとわせつなの2名が半妖なのか否かは気になるところです。

まあ、殺生丸に関わりのある人間の女といえばりんくらいであり、殺生丸りんのその後は『犬夜叉』ファンとしてはとても気になるポイントだったところですが、その答えが明らかになるかもしれないのが、今のところ最も注目すべきところなのだと思っています。

というか、殺生丸の相手がりんだからその娘が半妖なのだという展開以外があったとしたら、少なくとも多くのファンを敵に回しそうなので、まず間違いなくメインキャラクターの殺生丸の娘はりんの娘でもあるという推測に異を唱える人は少ないのではないでしょうか?

犬夜叉とは?

『半妖の夜叉姫』という作品のアニメ化に歓喜している人は少なくないと思いますが、失礼ながらそういう人は大概いい年した大人だと思います。

連載が始まったのは四半世紀前の1996年。連載終了したのはその12年後の2008年。

最初から読んでいた人の大半はアラサーでしょうし、十代でもファンはいるでしょうけどそれはかなりの漫画好きなのではないかと思われます。

そういうわけで、若い世代には知らない人も多く、知っている世代でも思い出の作品と化していて忘れているところが多い作品なのではないかと思います。

僕も、『半妖の夜叉姫』やった~と思いつつ実は『犬夜叉』の記憶がところどころ抜けています。(笑)

そういう時は、やっぱり過去作のおさらいが必要ですよね~

それでこそ『半妖の夜叉姫』も十全に楽しめるのではないかと思います。

過去にアニメ化された作品でもあるので、それでおさらいするのも悪くないとは思いますが・・

ただ、当時の少年漫画の人気作品は今のアニメほどサラッと見れる話数ではありません。『犬夜叉』に関しては4年近くアニメが放送されていましたからね。

なので原作漫画でおさらいするのが個人的にはおすすめです。というか、僕はこれから久しぶりに『犬夜叉』の原作漫画を読んでみようかなぁと思っています。

ずっと連載で読んでいて通して読んだことはなく、そして通して読んでみたら印象が変わるのが長期連載漫画というものです。とはいえ、なかなかそんな機会はないものなので、これをその良い機会と捉えて楽しみにしています。

読んだことがある人も無い人も、『半妖の夜叉姫』の前におさらいしてみてはいかがでしょうか?

『ヒカルの碁』の名場面、名台詞から囲碁を学ぼう!(その4)

ヒカルの碁週刊少年ジャンプで連載されていた人気少年漫画です。なので一見地味な囲碁の対局シーンにおいても格好良い演出がされていますが、個人的には塔矢親子と藤原佐為(sai)との対局の演出がとても素晴らしいと感じます。

また、これらの対局に限らずモノローグがまた格好良いですよね。

緊張感や焦り、はたまた自信のようなものが伝わってくるモノローグ。なのですが、しかし囲碁のことを知らない人からしたら雰囲気を楽しんでいるだけになりがちだったのではないかと思います。

今回紹介するモノローグも、モノローグと合わせて盤面の様子がハッキリと描写されているものの、連載当時に読んだ時は正直意味がよく分かりませんでした。(笑)

というわけで本記事の趣旨にピッタリということで紹介することにしました。

今回の名場面・名台詞

この一手で白の眼形をおびやかす!

※文庫版3巻の塔矢アキラのモノローグより

ヒカルの碁をそれなりに囲碁そのものにも興味を読んでいた読者であれば、作中でも簡単にはルールが紹介されているので囲碁における眼が何なのかを何となくレベルであっても分かっているのではないかと思います。

分かっていない人のために簡単にいうと、黒白いずれかの石のみで囲われた盤面の交点のことで、これを二つ以上作るスペースがあることは即ち複数の着手禁止点を作るれることになるため、相手から取ることができない生きた石となります。

難しいですかね?

難しい人は、文庫版1巻の第7局でコラム的に紹介されている詰碁問題を見てみると理解が深まるかもしれません。

いずれにしても、ここでの塔矢アキラは相手の石を簡単には生かさないぞ・・と、そういう気迫を見せているわけですね。

ヒカルの碁の対局シーンの棋譜はほとんど実在の棋譜なのですが、問題のシーンの棋譜を改めて見てみると、白が黒を攻めようとしている場面で逆に黒が白を攻めようとしているわけで、そう言うとなかなかに強烈な手であることが分かっていただけるのではないかと思います。

とはいえ、相手に簡単に眼を作らせないようにする。そういう形を目指して打っていくというのは常套手段のひとつだったりします。

囲碁初心者の人は、相手に眼を作らせない形、逆に自分は眼を作りやすい形を意識して打つようにすると上達が早くなるかもしれません。

強烈に感じられても基本的な考え方に基づいた打ち方なのだということを覚えておきましょう!

こちらは、ヒカルの碁囲碁を覚えたい人にオススメの書籍です!

単にキャラクターの知名度を借りただけのような書籍ではなく、この3冊で基礎の基礎から相当に実践的なところまでをキッチリ楽しく学べる良書で、真面目に学べば有段者になるまでの知識が詰まった内容になっていると思います。